沖縄県で相次いで発覚した米兵による性的暴行事件に抗議する県民大会が22日、沖縄市の市民会館で開催された。主催者発表で2500人超が集まり、参加者は会場の外まであふれた。事件を繰り返させない一義的な責任は日米両政府にあるとして、再発防止と被害者への謝罪や補償などを求める決議を採択した。
県では3月以降、米兵による性的暴行事件が相次いで検挙されていたことが、6月に報道で発覚。日米両政府が合意した在日米軍関係事件の通報基準が順守されず、捜査当局や事件を把握していた政府が、県や関係市町村に伝えていなかったことが問題になった。
深刻な性暴力が繰り返される現状を打開しようと、県内21の女性団体でつくる県女性団体連絡協議会を中心に労働組合や平和運動団体が集まり、大会の実行委員会を組織。市民主導で準備を進めた。
若い世代の代表として登壇した沖縄県北谷(ちゃたん)町出身の慶応大3年、崎浜空音(そらね)さん(22)は、2016年に女性が米軍属に暴行、殺害された事件が起きた際も抗議の県民大会に13歳で参加した。当時を振り返り「また数年後、事件が起きて、私たちは今、中高生の子たちをここ(抗議集会)に立たせてしまうのか。もう絶対に繰り返させない」と力を込めた。
玉城デニー知事も参加。米軍側が一連の事件を米兵個人の問題と強調していることを念頭に「二度と被害者を出さないよう、軍そのものの構造的な責任も求めていきたい」と述べた。参加者の拍手によって採択された決議には、事件発生時の県や市町村への速やかな情報提供▽事件で勾留された米軍関係者を特権的に扱う日米地位協定の抜本的改定――を日米両政府に求めることも盛り込まれた。
主催者側は大会について「基地反対を前面に出すのではなく、性暴力を人権や尊厳の問題として扱う」と強調。米兵による一連の性的暴行事件に対する抗議の意見書を7月に可決した県議会に参加を呼びかけた。だが、玉城知事を支える県政与党と、中立の維新が会派として参加したのみで、自民と公明は所属議員の「自主参加」に。超党派といえる規模にならなかった。
自民、公明の両会派は「自主参加」とした理由を「可決した意見書に沿って政府に要請行動しており、議会の役割は果たした」と説明。ある自民県議は「過去に県民大会と称し、米軍基地問題で政府と対立する政治闘争に利用しようとする動きがあった。慎重にならざるを得ない」と語った。
1995年9月に起きた米兵3人による少女暴行事件では、翌月に超党派の県民大会が実現し、約8万5000人が集結。日米両政府による米軍普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながる政治的なうねりを生んだ。【比嘉洋】