米グーグルがスマートフォン端末メーカーに自社の検索アプリの初期搭載などを強要したとして、公正取引委員会は22日までに、同社の独占禁止法違反を認定し、再発防止を求める排除措置命令を科す方針を固めた。関係者への取材で判明した。すでに同社に処分案を通知し、意見を聞いた上で最終判断するという。
グーグルは「GAFA」と呼ばれる巨大デジタルプラットフォーム企業の一角で、インターネット検索サービス市場でトップのシェア(市場占有率)を誇る。公取委によるGAFAに対する排除措置命令は今回が初めて。命令に従わない場合は罰則が科される。
関係者によると、グーグルは遅くとも2020年7月以降、自社の基本ソフト(OS)アンドロイドを搭載するスマホ端末メーカーに対し、自社のアプリ配信サービス「グーグルプレイ」を搭載する条件として、自社の検索エンジン「グーグルサーチ」やブラウザーの「グーグルクローム」といったアプリを初期状態の端末に搭載し、画面上の目立つ位置に配置する契約を結んでいた。
また、検索連動型広告事業によってグーグルが得た収益をスマホ端末メーカーに分配する条件として、競合他社の検索アプリを搭載しないよう求める契約を結んでいた。
公取委は、この二つの契約が端末メーカーの取引や事業を不当に拘束しており、独禁法が「不公正な取引方法」として禁じる「拘束条件付き取引」に該当すると判断した。
スマホ検索サービスで国内シェア7割以上(総務省調べ)を占める巨大企業のグーグルからの要請にはメーカー側も従わざるを得ず、結果的に、利用者はグーグルのサービスを使い続けるよう誘導され、他社サービスに切り替える選択肢を制限されるなど、健全な市場競争が阻害されたとみられる。公取委はこうした点も考慮した模様だ。
グーグルを巡っては、公取委が23年10月、独禁法違反の疑いがあるとして調査を開始したことを発表。第三者に公開で情報提供を呼び掛ける手続きを初めて適用した。今年4月には、競合するLINEヤフーの取引を一部制限した行為について「確約手続き」を適用し、グーグルが提出した改善計画を認定した。確約手続きは公取委と事業者との合意によって違反の解決を図る独禁法の行政処分の一つで、適用した場合に事業者は法令違反の認定を免れる。
GAFAが扱うような比較的新しい市場分野では、独禁法違反の立証に長期間を要するため、公取委は「早期の秩序回復を図る」などとして、改善計画を提出させ確約手続きを適用したり、自主的な改善が確認された場合には調査を打ち切ったりするケースがほとんどだった。一方、今回のグーグルに対する調査では、問題とされる行為が契約で明文化されていた▽スマホ画面上の目立つ位置に複数の検索アプリを配置されることは通常ではあり得ない――ことなどから、市場への影響を高い確度で立証できるとみて、排除措置命令に踏み切ったとみられる。【渡辺暢】