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「宇川も必ず戦場になる」 日米共同演習 京都の基地、住民に緊迫感

毎日新聞 2024年12月24日 6時15分

 「まさしく臨戦態勢。これまでとは全く違うレベルの演習で、(台湾有事によって)南西諸島で戦端が開かれたら宇川も必ず戦場になると実感しました」。地元住民は驚きの声を上げた。Xバンドレーダーを配備した米軍経ケ岬通信所(京都府京丹後市丹後町)周辺を慌ただしくカーキ色の自衛隊車両が行き交い、近くの旧宇川中グラウンドは自衛隊のおびただしい数の車両で埋まり、体育館は隊員の宿泊の場となった。

 「キーンソード25」と名付けられた大規模な日米共同演習が10月23日~11月1日、南西諸島の島々をはじめ全国の自衛隊、在日米軍施設で実施された。米軍経ケ岬通信所や隣接する航空自衛隊経ケ岬分屯基地も“最前線”となった。

 演習に参加したのは自衛隊が3万3000人、艦艇30隻、航空機250機、米軍が1万2000人、艦艇10隻、航空機120機。経ケ岬通信所での演習には、陸上自衛隊第7普通科連隊(福知山市)、第3偵察戦闘大隊(滋賀県高島市)、第3飛行隊(大阪府八尾市)などが参加。演習の詳細は不明だが、実弾ではなく、空砲を使用したという。

 弾道ミサイルを探知・追尾する米軍のXバンドレーダーの京丹後市への配備は、青森県つがる市の車力通信所に続き国内では2例目。2013年2月22日の日米首脳会談で決定したが、住民にとっては寝耳に水だった。

 首脳会談4日後の26日、防衛省の金沢博範事務次官(当時)は京丹後市役所を訪れ、中山泰市長と面談した。市長は「市民の安全安心が第一で、リスクが払拭(ふっしょく)されないと了解できない」と強調した。これに対し、事務方トップの金沢次官は「敵をやっつけるものではなく、攻撃の対象になることは考えられない」と答えた。

 その後も防衛省幹部が相次いで市を訪れ、早期配備への理解を求め、中山市長は同年9月19日、記者会見で「住民の安全安心が確保されたと理解した。国民の安全安心である国益を分かち合っていくため受け入れることを決めた」と発表した。

 金沢次官が説明したように、Xバンドレーダー基地は攻撃の対象とはならないのか。

 地域住民の代表らと基地問題を話し合う防衛省の安全安心対策連絡会(安安連)で、住民から攻撃対象となることへの不安の声が次々と上がったことがあった。ロシアによるウクライナ侵攻直後に開かれた第30回安安連(22年3月25日)だ。

 基地が所在する尾和地区の平井徳正区長(当時)は「自衛隊(航空自衛隊経ケ岬分屯基地)と米軍基地があり、万が一のことがあったら悲惨な状況となる。尾和にはどこにも逃げる所がなく、地域で不安が出てきた」と声を上げた。隣接の袖志区の山口圭一区長は「最初に狙われるのは基地であることはわかっている」と、ウクライナ侵攻でレーダー基地などが最初に攻撃されたことなどを踏まえて発言した。安安連には、これまでになかった緊迫感が漂った。

 ロシアの軍事侵攻は地元住民に大きな衝撃を与えた。安安連で、住民が戦争への不安について本音を語ったのは初めてだった。

 軍事一体化を深める自衛隊と在日米軍。南西諸島では、台湾有事を想定してミサイル基地が相次いで新設されている。東アジアの重要な軍事拠点となった京丹後市では今後も大規模な日米共同演習が展開されるだろう。

 「新たな戦前」という言葉が語られ始めた。基地の地元住民はカナリアのように“異変”を肌で感じ始めている。【塩田敏夫】

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