インスタグラムで本人と似通ったユーザー名を使った「なりすまし」の投稿者を特定するため、投稿から一定期間経過した後のログイン情報の開示が認められるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(尾島明裁判長)は23日、「開示対象になり得る」との初判断を示し、プロバイダー側に開示を命じた。裁判官4人全員一致の意見。
判決によると、原告は2021年4月、インスタグラムで、自身と似たユーザー名のアカウントから原告本人の写真を複数枚投稿された。原告は「無断で写真を使われた」と被害を訴えたが、SNS(ネット交流サービス)では、投稿時の記録がSNS事業者に残らない場合がある。このため原告は、投稿から21~45日後にあった8件のログインについて、ログインした人物の住所や氏名の開示をプロバイダーに求めた。
賠償を求めたい相手のログイン情報の開示をプロバイダーに求められる改正プロバイダー責任制限法は、開示対象のログイン情報について、投稿と「相当の関連性があるもの」に限定している。
訴訟でプロバイダー側は、なりすまし投稿があった当日に、投稿者を特定できないログインがあったと主張。投稿に近接したログイン情報の開示はともかく、これより後の8件の開示は通信の秘密の保護上、認められないと訴えていた。
小法廷は、被害者救済を図る改正法の趣旨を踏まえ、投稿と時間が空いているというだけで一律に関連性を認めないのは相当ではないと指摘。「必要性が認められる事情があれば開示の対象になり得る」との初判断を示した。その上で、投稿と最も近い1件の開示を命じた。1審、2審は8件とも開示を認めていた。【巽賢司】