今年はシャンソンを耳にする機会が多かった。パリ・オリンピック開催や、「日本シャンソンの女王」と呼ばれた越路吹雪さんの生誕100年が重なり、注目を浴びたようだ。ただ、シャンソンを知らない世代も増えており、そんな状況にスターたちは「このままでは絶滅しかねない」と焦りを募らせている。
7月中旬、東京都内で日本最大のシャンソンコンサート「第62回パリ祭」が開かれた。1963年から続く老舗コンサートで、今年も歌手の美川憲一さんや山本リンダさん、鳳蘭さんら数多くのスターが登場。「愛の讃歌(さんか)」や「パリ祭」などの名曲が披露されると、会場は拍手に包まれた。ただ、観客の大半は中高年が占め、若者の姿は少なかった。
「シャンソンという言葉さえ知らない若者が増えた」。そう嘆くのは歌手の美輪明宏さんだ。シャンソンが一大ブームとなった1950~60年代には、NHK紅白歌合戦にもシャンソン歌手がこぞって登場した。しかし、近年では2015年に美輪さんが「ヨイトマケの唄」を歌ったのを最後に遠のいている。こうした状況に、シャンソン歌手のクミコさんも「絶滅危惧種になりかねない」と憂えている。
パリ祭の集客も思わしくなく、運営も厳しさを増している。コロナ禍以降、客足は半減。スポンサーも付かない状況が続く。それでも美川さんらは「パリ祭の灯を絶やすまい」と、出演料の値下げに協力するなどして、毎年ステージで歌い続けているという。
シャンソンはこのまま消え去ってしまうのか。
クミコさんは「私たちの世代がどれだけやっていけるかにかかっている」と力を込める。美川さんは「(音楽も)今はジャンルにこだわる時代ではない。シャンソン以外の歌手にもどんどん歌ってもらうことで、シャンソンを広めていけたら。私もしぶとく歌い続けるわよ」と話している。【山田泰生】