現役の長野県議が妻を殺害したとして、殺人罪に問われた事件。長野地裁は23日行われた裁判員裁判(坂田正史裁判長)で、元県議、丸山大輔被告(50)に懲役19年(求刑・同20年)の実刑判決を言い渡した。犯行を示す直接的な証拠はなかっただけに、弁護団は「無罪を確信していた。驚くべき判決」と衝撃を表した。【竹田直人、鈴木英世】
丸山被告は黒いスーツに青いネクタイ姿。有罪と聞いても表情は特に変わらなかったが、坂田裁判長が判決理由を伝え始めると汗が噴き出し、額や目の周り、頰をハンカチでしきりに拭った。公判終了後、弁護団を通じて「意外な判決でショックを受けている」とコメントした。
判決では、防犯カメラの画像などから「丸山被告の車である可能性がある車両が複数箇所で確認されており、『被告が長野市の議員会館と事件現場の酒蔵兼自宅を往復した』ということは仮説にとどまらない」とするなど、間接的な証拠を積み上げて有罪とした。
弁護団は記者会見で「(車について)完全に一致するとは認定せず、可能性が高い車両という認定にとどまっている」などと疑問を呈した。「被告が犯人でなければ、具体的に説明できない事実が存在する」との判断についても、「間接的な事実の一つ一つには非常に弱いものがある(と判決で言及している)。それが積み重なって有罪とされるのは疑問」とした。年内に控訴する方針で、「被告が犯人でない可能性をしっかり検討してもらわなければならない」と述べた。
長野地検の長沢範幸次席検事は「間接証拠が適切に総合評価され、検察側の主張が受け入れられたものと理解している」とコメントした。
約2カ月半にわたった公判。裁判員は6人全員が記者会見に応じ、「直接的な証拠がない事件だったが、テーマ(争点)を四つに分け、わかりやすく議論できた」「間接証拠を吟味していくのは難しかった」などの声が上がった。袴田事件で再審無罪判決が確定するなど冤罪(えんざい)事件が注目されているが、裁判員の1人は「他の事件のことはインプットせず、この法廷に出された証拠だけで判断するよう心がけた」と話した。