阿部俊子文部科学相は25日、小中高校で教えるべき内容を示す学習指導要領の改定を中央教育審議会(中教審)に諮問した。学校や教育委員会の裁量で、小学校の1コマを現状の45分から40分に、中学校では50分から45分にそれぞれ短縮し、空いた時間を柔軟に活用できる仕組みなどを検討する。多様化する子どもに対する教育の質を高めるとともに、教員の負担軽減につなげる狙い。中教審は2026年度中の答申を目指す。
学習指導要領は各学校で教える学習内容の最低基準で、法的拘束力が認められている。ほぼ10年に1度改定されており、今回改定する内容は30年度以降、小学校から順次実施される見通し。
諮問では、多様な個性や背景がある児童生徒を包摂する必要性を強調。学校や教委の創意工夫を引き出すための柔軟な教育課程編成を促進するとした。具体的には、小学校の授業時間を現行の45分から5分短縮すると、小学4~6年では年間で計127コマ分の余白が生まれる。そこに児童や学校の実態や興味・関心に沿った活動を充てることなどを想定している。
ただ、教える内容が減らないまま授業時間が短縮されれば教員の負担感が強まりかねず、現場には工夫が求められそうだ。児童が短い時間で理解を深められるかも不透明で、十分に対策を取らなければ基礎的な学力の低下につながる懸念もある。
また、現状では原則固定化されている学年ごとの学習内容に弾力性を持たせる。学年区分を幅広く設定し、過去につまずいた分野に立ち戻って学び直しやすくする。例えばかけ算の「九九」は小2で学ぶが、小3でも扱えるような仕組みが検討される。
生成AI(人工知能)の飛躍的な発展を見据え、先端技術に関する教育内容を充実させる。フェイクニュースのほか、多様な情報に触れにくくなる「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」といった現象も踏まえ、情報モラル、メディアリテラシーの育成も強化する。
全国的な課題となっている教員不足も踏まえ、教員の負担軽減策も重視。年間の総授業時数は増やさないことを前提とする。過去の指導要領改定に伴って教科書の分量が増え、教員の多忙化に拍車を掛けているとの指摘があることから、教科書の分量についても検討する。
一方、阿部氏は教員養成のあり方についても中教審に諮問した。社会人から教員への転職を促すため、大学院で教員免許を取得しやすくする。大学で教職課程を取っていない人を想定した「教員資格認定試験」の実施方法も改善する。民間企業などとの兼任の可否も議論する。【斎藤文太郎】