「問題なしね」「はい、問題なしでーす」――。25日に国の運輸安全委員会が公表した、羽田空港衝突事故の経過報告書。海上保安庁機内のボイスレコーダーの記録からは、衝突直前の詳細なやり取りが明らかになった。衝突まで操縦室内に異変は感じられず、談笑する様子も残っていた。
1月2日午後5時45分。音声記録などによると、海保機は事故の約2分前、空港の管制官から、離陸順位が1番目でC滑走路手前の停止位置(C5)まで移動するよう英語で指示を受けた。交信していた副操縦員は「C5まで移動。1番目。ありがとう」などと英語で復唱した。
機長と副操縦員は互いに「問題なし」と確認したが、機長の操縦で同46分13秒に停止位置を越え、走行を続けた。副操縦員らも止める様子はなく、海保機は46分47秒に滑走路上で停止する。
海保機は能登半島地震の被災地に支援物資を運ぶ予定で、機内の通信員はこの時、現地での任務について海保の基地から問い合わせを受けた。通信員が「機長、今よろしいですか」と声をかけると、機長は「ちょっと後で」と返答。その後は変わった様子はなく、乗員の笑い声も記録されていた。
ボイスレコーダーの記録が終了したのは、着陸してきた日本航空機と衝突した47分27秒。滑走路上で停止した40秒後だった。【茶谷亮】