化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件を巡り、社長らが東京都と国に約2億5000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審は25日、東京高裁(太田晃詳裁判長)で結審した。判決は2025年5月28日。結審後の記者会見で会社側は「判決で正義を」と訴えた。
社長らは、軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反に問われ、20年3月に逮捕、起訴されたが、後に起訴が取り消された。1審判決(23年12月)は、警視庁と東京地検の捜査を違法とする一方、逮捕・起訴の根拠となった公安部による経済産業省の輸出規制省令の解釈は妥当と判断した。
控訴審では、1審の審理で「事件は捏造(ねつぞう)」などと証言した警部補2人に続き、別の男性警部補も「立件するような理由はなかった」と証言。公の場で現職警察官3人が捜査を批判する異例の展開となった。
会社側は、公安部と経産省の打ち合わせに参加した警部補の証言や、その際の捜査メモといった新たな証拠を踏まえ、「公安部が経産省の省令解釈をねじ曲げた」と改めて主張した。
一方の都側は、捜査批判した3人は他の捜査員と人間関係が悪く、「それぞれの不満が相互に共有され、伝聞や推測が語られた」と証言の信用性を否定。会社側の主張は一部の捜査員らの思い込みによる筋書きを借用した「壮大な虚構だ」と反論した。
結審後、会社側は記者会見を開き、原告で、会社元顧問、相嶋静夫さん(享年72)の長男(51)は「警察に自浄作用は期待できない。判決が正義を示してほしい」、会社側代理人の高田剛弁護士は「都側は3人が異端だと総括しており、非論理的で感情的。強い危機感を覚える」と話した。【遠藤浩二】