開幕まで4カ月を切った大阪・関西万博。色とりどりの折り鶴を会場に展示して、「命」を輝かせたい。そんな思いを込めたプロジェクトの準備を進める森安美さん(54)に、企画の経緯や意図などを聞いた。
認知症高齢者らを支援する大阪府門真市の市民団体「ゆめ伴(とも)プロジェクトin門真実行委員会」の総合プロデューサー。2025年4月に開幕する大阪・関西万博では「いのち輝く折り鶴100万羽プロジェクト」が採用された。折り鶴づくりを通してみせる高齢者の命輝く姿と、その取り組みに共感の輪が広がる。
大学卒業後、民間でケアマネジャーとして働き、多くの高齢者と接した。認知症と診断された際、本人や家族が打ちひしがれる姿に「何か希望を感じてもらいたい」との思いが募った。自宅と施設を行き来するデイサービスが、逆に地域社会との接点を遠ざけていると感じた。高齢者を支える地域づくりこそ、問題解決の糸口になると考えた。
一念発起して14年、長年勤めた会社を退職し、翌年に大阪府立大(当時)の大学院に入り地域福祉を学び直した。「マイナスからゼロを目指すのではなく、プラスへの転換を考えたい」。認知症になっても輝ける街づくりを目指し、18年にケアマネの仲間らと「ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会」を立ち上げた。
認知症の人や家族からの相談をもとに、カフェやサロンなど、高齢者が主体的に活動できる居場所づくりを次々と手がけた。軌道に乗ってきたところで新型コロナウイルス禍に襲われ、外出の機会も失われた。新たな挑戦のきっかけは、折り鶴づくりで心が和み、明るくなったという認知症高齢者の声。活動の柱の一つに据え、門真市民文化会館に約15万羽を展示する企画を成功させた。
21年のドバイ万博では日本館来場の記念品として、手作りの折り鶴が採用された。「ドバイなんて行ったことない」「私の鶴が海を渡るなんて」などと高齢者から喜びの声があふれた。「命が輝くとはまさにこれだ」。大阪・関西万博のテーマと重なり、次の目標に迷わず決めた。
昨年秋から活動拠点とするイズミヤショッピングセンター門真の協力で、約20万羽を飾った「折り鶴ジャパンパビリオン」を設置。大阪モノレールは万博閉幕まで車内に折り鶴を装飾した車両を走らせ、活動の周知に一役買う。英国やナイジェリアの有志とも連携し、万博参加国の関係者が視察に訪れたことも。
「たった一枚の折り鶴で誰もが社会参加しつながることが実感できる。万博が生きる希望になっている」。来年8月には万博会場で折り鶴を使う展示イベントの実施も決まった。孤独や不安を乗り越えた折り鶴が、大舞台で羽ばたく姿を思い描く。【東久保逸夫】
もり・やすみ
東大阪市在住。ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会は2021年、政府が持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組む企業・団体などを表彰する「ジャパンSDGsアワード」で特別賞を受賞した。