宇都宮市の小学5、6年生が実際に読んだ本の中から「友だちにすすめたい本№1」を選ぶ児童文学賞「うつのみやこども賞」が今年、40周年を迎えた。出版社や団体が選ぶのではなく、読者である子どもたち自身が選定委員を務める全国的にも珍しい文学賞。受賞作家による講演会も毎年実施されており、「選んだ子に会えることがうれしい」と海外から駆けつける作家もいるほどだ。来年1月26日にはライトキューブ宇都宮(同市宮みらい1)で40周年記念式典が開かれる。
同賞は1984年、市立中央図書館が子どもによる児童文学作品評価への道を切りひらくことを目的に、読み聞かせなどを行うボランティア団体でつくる「宇都宮子どもの本連絡会」と協力して創設した。
当時は「若者の活字離れ」が叫ばれ始めた時期。同館は連絡会と子どもの読書推進活動に取り組むとともに、受賞作を表彰するだけでなく、選定委員の子どもたちへ感謝状を贈り、読書に向き合う意欲を高めてきた。
選定委員は毎年、市内の5、6年生から公募で決定。任期は1年で、約20人前後の希望者全員で選考活動を行ってきた。対象の図書は、その年に出版された日本人作家による小学校高学年向けの創作児童文学。全員が同じ本を毎月4冊、年間40冊を読み、作品の評価を行っている。
選定会議も子ども主体で進め、それぞれが感想や評価点などを発表し合い、受賞作を決める。互いに推薦する本を巡り、議論が白熱することもあるが、他の子どもの意見を聞いて納得したうえで、年度末に受賞作1点を選んでいる。
これまで40作品が選ばれ、今回は中学受験を目指す5年生の姿を描いた尾崎英子さんの「きみの鐘が鳴る」(ポプラ社)が受賞作に決まった。委員からは「自分らしく頑張る姿に励まされた」「自分たちに身近な内容で、友達にすすめて一緒に話ができる内容だった」などと評価された。
記念式典では尾崎さんが講演するほか、特別ゲストとして「かいけつゾロリ」シリーズの作者、原ゆたかさんがトークショーを行う。同館によると、例年は館内でアットホームに表彰式を実施していたが、今回は初めて400人定員で参加希望者を募集。約2週間で満員になったという。
海外在住の作家が帰国して講演に臨むこともあるなど、書き手にとっても貴重でうれしい賞のようだ。同館の担当者は「地道に活動に取り組んできたが、40周年を機に賞の認知度を向上させ、読書推進活動を続けていきたい」と話している。【松沢真美】