子どもたちの新年のお楽しみといえば、なんといってもお年玉だ。
だが、渡す側の大人は明確なルールがないだけにモヤモヤすることも多いのではないか。
年齢に応じた金額の相場は?
失礼に当たるようなケースはある?
キャッシュレス化が進んでいるけど現金でいいの?
2025年を迎える前に、徳島文理短大講師のマナーコンサルタント、川道映里さんに聞いた。
年代別の相場は?
お年玉の由来は諸説あるが、正月の神様である「年神様」の魂が宿る鏡餅を家長が「御年魂(おとしだま)」として分け与えたとするものなど、「年神様からのたまわりもの」という考えに基づく説が多い。
川道さんによると、そうした由来があることから、お年玉は基本的に目上の人が年下の人に渡すもので、お返しは不要となる。上司の子どもなどに渡したい場合は「絵本代」「文具代」などとするとよいという。
気になる金額だが、川道さんは「家庭の事情や地域、立場によって考え方はさまざまなので、特に決まりはありません」と語る。
その上で、一般的な相場としては、保育園児や幼稚園児はお金の代わりにおもちゃやお菓子▽小学校1~3年生は1000~3000円▽小学校4~6年生は3000~5000円▽中学生は5000円▽高校生は5000~1万円▽大学生は1万円――が大まかな目安になるという。
「親戚同士の付き合いで、もらった分だけ返すというケースも多い。子どもの保護者と親しい間柄であれば、金額をあらかじめ相談しておくのもベターです」
ただし、4000円や9000円といった死や苦を連想させる「忌み数」は避けたほうがいいとされ、喪中の家庭に対してはお年玉を控えるのが一般的だという。
渡す時期は正月三が日が原則とされるが、難しい場合は、地域によって7日までだったり15日までだったりする「松の内」にするとよい。
もらう側の3割「キャッシュレス希望」
渡し方にもいろいろあるが、まだまだ現金派が多いようだ。
調査会社「インテージ」(東京都千代田区)は11月、全国の15~79歳の男女5000人を対象にお年玉に関する調査を行った。
その中で、お年玉を渡す予定がある18歳以上の人に「自分の子ども」「孫」「親戚の子ども」に渡す方法を尋ねたところ、「現金(手渡し)」と答えた人がいずれも9割を超えた。
一方で、もらう予定がある20歳以下の人の3割が「スマホのキャッシュレス決済でもらいたい」と回答した。これに対し、その方法で渡すと答えた18歳以上の人は相手が「自分の子ども」でも1・2%しかおらず、「孫」や「親戚の子ども」に対しては1%未満だった。
ちなみに、お年玉を渡す予定がある18歳以上の人の予算総額は平均2万4775円だった。
ほとんどの人が現金を手渡ししているとはいえ、キャッシュレス決済や振り込み、現金書留といった方法が失礼に当たるわけではない。親戚の子どもなどは遠方にいるケースも多いからだ。
ただ、川道さんは現金の手渡しには良さがあると語る。
「幼い子どもほど、現金を手にすることでお金のありがたみや使い方を学ぶいい機会になる。24年に新紙幣が発行されたばかりなので、肖像画に描かれた人物の話をするきっかけにもなります」
大事なのは思いやり、対応は臨機応変に
また、現金を手渡しする場合は「あなたのために準備した」という心遣いを示すため、新札で渡すこともマナーの一つとされている。
お札の肖像がある面を表とし、お札の左から3分の1をまず折り、右側をかぶせるように三つ折りにしてポチ袋に入れる。
この折り方は、お札が開きやすいだけでなく、いくら入っているかも分かりやすくなり、相手への気遣いにつながるという。
ポチ袋に名前を書く欄がなければ、表に子どもの名前、裏側に自分の名前を記入する。
出先で急きょ、お年玉を渡すことになった場合は、新札が用意できなかった旨を伝え、ティッシュペーパーなどに包んで渡すとよい。
川道さんは「マナーは相手に対する思いやりを言葉や行動で表したものです。絶対にこうしなければならない、というものではありません。相手や置かれた状況に合わせて臨機応変に対応してもらえたら」と話している。【松山文音】