Infoseek 楽天

「聖子ちゃん」のセーラー服姿も 昭和レトロが人気の学生服資料館

毎日新聞 2025年1月12日 9時0分

 建物の中に一歩足を踏み入れると、そこには昭和レトロな空間が広がっていた。岡山県倉敷市の児島学生服資料館は往年のアイドル歌手がセーラー服姿でほほえむポスターなど、学生服にまつわる貴重な資料を展示し、人気を集めている。荒木悟館長(61)は「学生服だけでなく、倉敷市児島地区が一大繊維産業の街となった歴史も見てほしい」と話す。

 資料館は学生服メーカー「日本被服」が、同社敷地内の木造2階建て倉庫を利用して2010年11月に開設。児島はデニムの街としても知られ、ジーンズメーカーが先行して「ジーンズミュージアム」を開館していた。そこで日本被服の佐藤浩司社長が「学生服生産の歴史も発信していこう」と発案。営業部企画担当部長の荒木さんが資料収集を指示された。

 荒木さんは「業態を変えたかつての同業者を回ったりネットオークションで探したりした」と苦労を振り返る。郷土史関連の本などを読んで児島の産業史も勉強し、約1年かけて開館にこぎ着けた。

 岡山県南部の沿岸地帯は江戸時代に広く干拓されたが、米より塩気に強い綿花が栽培され繊維産業へとつながる。明治、大正時代には足袋製造が盛んとなり、大正後期に学生服の生産が始まった。1960年代のピーク時には児島の学生服メーカーは100社に上り、年間1000万着以上を生産、全国シェアの7割を占めたという。荒木さんはこうした歴史を年表にして掲示。集団就職列車で児島にやって来たセーラー服の少女たちや工場内のミシンの列など活況ぶりを写真で伝える。

懐かしのホーロー看板

 他にも、戦時中の国民服に似た折り襟の制服や、ナイロンなど合成繊維の詰め襟学生服が並び、デザインや生地の変遷を紹介。丈の短い学ランや幅広のズボンなど、「ツッパリ」学生の間ではやった変形学生服も時代の一コマだ。メーカー各社の社名が書かれたホーロー看板、松田聖子さんや松本伊代さんらのセーラー服姿のポスターを懐かしむ人も多い。

 資料館の2階は試着撮影室だ。詰め襟とセーラー服が多数あり、黒板、カバンも用意。好きな制服に着替え、青春時代に戻って撮影できるとあって、「人気のスペースです」と荒木さん。

 入館無料で年間約1万人が来館。地元の小学生が敷地内の工場見学と合わせて訪れ、外国人観光客も興味深げに見て回るという。愛知県安城市から来た男性(25)は「制服が並んでいるだけかと思ったが、産業の歴史も学ぶことができた」と感心していた。

 学生服のデザインは男女ともブレザーが多くなった。女子もズボンを選べるなど自由度が増し、機能も格段に増しているという。入学・進学の節目で気持ちを新たに学生服に袖を通す子どもたち。全国の学校を営業で回る荒木さんは「時代とともにデザインなどは変わっても、『子どもたちにとって学生服は晴れ着』という気持ちで届けています」と話す。【石川勝己】

この記事の関連ニュース