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日本で唯一、公認チベット寺院 恋愛成就と「映え」でも人気 名古屋

毎日新聞 2025年1月12日 6時15分

 「まるでチベットに来たみたい!」。名古屋市守山区の寺院「強巴林(チャンバリン)」は、そんな気分にさせてくれる。それもそのはず。日本で唯一、公式に認められたチベット仏教寺院なのだ。恋愛成就の御利益があり、パワースポットとしても知られている。

 なんと言っても目を引くのが、高台に輝く金ピカの屋根。その下には石段が伸びる。あれ、カンフー映画で見たような…? いやいや、赤や緑など5色のタルチョ(四角い旗)が風にたなびき、いかにもチベットだ。石段を登り赤い門をくぐると、「金ピカ屋根」の下にカラフルに彩られた建物が姿を現す。

 チャンバリンは初代住職の森下永敏さん(84)が2005年、チベット自治区ラサ中心部にある世界文化遺産の仏教寺院「ジョカン寺」(中国名・大昭寺)を模して建てた。チベット語で「チャンバ」は弥勒菩薩(ぼさつ)、「リン」は寺を意味するという。

 その内部にはジョカン寺と同じお釈迦様と12体の菩薩様がまつられている。じっと見つめていると「ジョカン寺とつながっている?」と思うほどに、神々しい。

 そもそもなぜ、チベット仏教なのか? 現在2代目住職を務める森下瑞堂(ずいどう)さん(66)が教えてくれた。

 「永敏さんは元々、別の宗教を信仰していました。厳しい修行が人助けにつながるとの信念があり、チベット仏教の修行がより厳しいと知って関心を持ちました。そして現地に出向き、最も高いところで標高約5000メートルの高所に点在する11カ所の寺を行脚する修行をこなし、ジョカン寺からチャンバリン建立を認められたのです」

 そんな本格的なチャンバリン。かつては現地から僧侶が来て法要をしていたそうだ。しかし、自治区ラサなどで僧侶らが加わった大規模暴動が08年に起き、中国政府は僧侶への監視を強化。来日は困難となり、宗教活動はしていないという。

 瑞堂さんは「現地の人が読むお経でなければ、本当の意味での布教活動にはなりません」と言う。だが、「良縁と恋愛成就」の御利益には、現地に伝わる昔話が色濃く残る。

 その昔、チベット高原で修行中だった雄猿の前に夜叉(やしゃ)(鬼女)が現れ、再三プロポーズした。雄猿は修行の身と断っていたが、その情熱に根負けし、夜叉に「二度と殺生しない」との条件をつけて結婚したという。雄猿と6体の子猿はチベット人の祖先と伝えられ、チャンバリンには木彫りの像が飾られている。

 日本に住むモンゴル人などが心のよりどころとして訪れ、元横綱の白鵬さんが来たこともあるというチャンバリン。最近は「映えスポット」としても人気を集める。瑞堂さんは「気軽に来て、異国の文化に触れるきっかけにしてもらえたらうれしい」とほほえんだ。【大原翔】

強巴林(チャンバリン) 

 名古屋市守山区青葉台101。名古屋ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」竜泉寺駅から徒歩5分。車では守山スマートインターチェンジから5分。開門時間は土日祝日の午前9時~午後5時。拝観料は200円。毎月の第1日曜日は、住職らが来訪者の願いを祈る法要「強巴林祭」(参加無料)を行う。

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