Infoseek 楽天

福岡・大濠公園に舞う大きな鳥の正体は? 人間の影響で行動変化か

毎日新聞 2025年1月13日 11時15分

 福岡市中心部の大濠公園に大型の鳥が数多く飛来している。公園の利用者が食べ物を奪われたり、けがをしたりする被害も出ているという。専門家は人間の食べ物を狙って集まっている可能性を指摘し、餌を与えないよう呼びかけている。

 上空で大きな翼を広げて公園を見下ろしていたその鳥は、突然に急降下して滑空しながら、ベンチに座った男性の手元にあったビニール袋を奪い去った。

 2024年12月中旬、取材していた記者の目の前で起きた出来事だ。男性は「水鳥がいたのでパンをあげていた。何が起きたのか」とあっけにとられた様子。周囲には同じ種類とみられる鳥が20羽以上いた。

 鳥類学者で東京大名誉教授の樋口広芳さんによると、この鳥はタカ科のトビ。全国に生息する猛禽類(もうきんるい)の一種で、広げた翼は1メートルを超える。樋口さんは「普段は死んだ動物や魚を食べるので自然界の『掃除屋』と呼ばれるが、近年は各地で人間の食べ物を奪う行動が定着してしまったようだ」と解説する。

 大濠公園は大きな池を囲む広い敷地に児童遊園や散策路が整備された、都市部のオアシスのような場所だ。しかし公園の管理事務所によると近年、遠足のお弁当やおやつを奪われた▽狙われた人がスマホを池に落とした▽けがをした――などのトビによる被害が寄せられている。

 園内で長年、ホットドッグを販売している倉田長紀さん(59)は「以前からトビはいたが、ここ数年で増えたように感じる。おにぎりを奪われたお客さんもいた」と話す。

 なぜ公園にトビが集まるのか。背景の一つと考えられるのは利用者による餌やりだ。

 樋口さんは「与えられた食べ物に味をしめると、人間が持つ物まで狙うようになり、若い鳥がマネをする。トビには餌をあげてはならないし、不意に奪われないよう気をつけてほしい」と強調する。

 トビの爪は鋭く、手などに当たれば大けがをする恐れがある。餌を与えることで自ら餌を得る力を奪うことにもつながるという。

 園内の池にはトビ以外にもさまざまな鳥が集まり、餌を与える利用者が絶えない。管理事務所は餌やりを禁じる看板を各所に立てて注意を呼びかけるが、担当者は「海外の観光客も増え、珍しがって鳥が餌を食べるのを撮影する人もいる。注意すると逆上されることもある」と頭を抱える。

 樋口さんは「パンくずを放り投げ、鳥が空中で上手にキャッチする様子を見るのは楽しいかもしれないが、それがどのような結果を生むのか考えてほしい」と訴えている。【平川昌範】

この記事の関連ニュース