太平洋戦争で大けがをしながら生還し、戦後は漫画史に残る作品を残した作家の企画展「漫画家 水木しげる(武良茂)と戦争」が、東京都千代田区のしょうけい館(戦傷病者史料館)で開かれている。波乱に満ちた人生を通じ、日本の現代史に関心を持つきっかけともなっている。
水木さんは1922年大阪生まれ。鳥取県境港市で育った。43年陸軍に徴兵され、南太平洋のニューブリテン島・ラバウルに配属された。翌年、爆撃で左腕を失った。治療のかたわら、原住民との交流が深まった。敗戦後は永住も考えたというが、46年に復員。アパート経営や紙芝居作家、貸本漫画家などを経て人気作家となっていった。
妖怪漫画の「ゲゲゲの鬼太郎」が大ヒットし、テレビアニメにもなった。「河童(かっぱ)の三平」「悪魔くん」などでも知られるが、「総員玉砕せよ!」など戦争体験を題材にした作品も描いた。長編漫画「コミック昭和史」は第13回講談社漫画賞(一般部門)を受賞した。
本展はこうした生涯を約50点で紹介する。出征や戦地での負傷、帰国後の苦労や夫人の武良布枝さんとの結婚などを自ら描いた「人生絵巻」などの作品や、インタビュー映像もある。
水木さんは2015年、93歳で亡くなった。学芸員の半戸文さんは「資料を追いながら、自分がもし同じ体験をしたらどうだっただろうかと、考えていただくきっかけになれば」と話している。
3月2日まで。無料。【栗原俊雄】