大学入学共通テスト(1月18、19日)が間近に迫った。試験当日は不測の事態が起きても、落ち着いて対応することが必要だ。
「共通テストに向かう途中に痴漢の被害にあった場合や目撃者として対応した場合などは、やむを得ない事由として追試験の対象となります」
本格的な大学受験シーズンが近づく中、文部科学省が2024年末にX(ツイッター)に投稿した一文だ。
大学入試センターがホームページで公表している25年度「大学入学共通テストQ&A」は、試験場に向かう際に痴漢の被害にあったり事件に巻き込まれたりした場合は、追試験(1月25、26日)の対象となる点を明記している。
こうした事態に遭遇した場合は、受験票に記載された「問合せ大学」に電話連絡するよう求めている。連絡先をあらかじめスマートフォンに登録したり、メモ帳に控えたりしておけば、安心だ。
痴漢対策は?
受験シーズンを迎えると、痴漢行為をあおるような投稿が近年、SNS(ネット交流サービス)上で目立つようになった。「試験開始時刻に遅れることはできない」という心理につけ込み、痴漢されても受験生は騒いだりしないだろうという卑劣な考えからだ。
「痴漢抑止バッジ」の普及などに取り組む一般社団法人「痴漢抑止活動センター」(大阪市城東区)の松永弥生・代表理事は「人の不安をあおること自体が悪質で、ひきょうだ」と憤る。
バッジ普及のプロジェクトは15年に始まり、22年以降は無償で配布。24年12月までに約3万個が希望者の手に渡った。バッジには「痴漢は犯罪」や「泣き寝入りしません」といったメッセージがイラストと共に書かれている。このように「痴漢は嫌だ」「許さない」と意思表示することには、痴漢行為をしようとしている人をひるませる効果があるという。
周囲にできることはないだろうか。松永さんは「周りが気付くことで痴漢の加害者は行為をやめます。困っている様子や、体調が悪そうな子がいないか目配りし、声をかけてあげてほしい。受験生に限らず誰もが安心して移動できることが当たり前だったら、痴漢なんて本当にやりにくくなると思うんです」と話している。
電車が遅れたときは?
「電車が悪天候で大幅に遅れた」
「乗ろうとしていた電車が事故で運休になっている」
そういったケースでは自分以外にも大勢の受験生が影響を受けている可能性があり、試験場で開始時刻の繰り下げが行われる場合がある。こちらも受験票記載の「問合せ大学」に電話連絡を入れ、指示を受ける。
電話が混み合ってつながらない場合も想定されるが、大学入試センターの担当者は「電話がつながらなかったことをもって受験生側に不利益となる扱いをするようなことはなく、状況に応じた対応が必要だ」としている。
繰り下げについては、駅の構内放送でアナウンスされる場合もある。
大学入試センターによると、前回の共通テストで追試験が認められた人は1629人。このうち9割超が「疾病・負傷」だった。
25年1月実施の共通テストの追試験は、新型コロナウイルスの5類移行に伴い、本試験との間隔が従来の1週間に戻っている。【千脇康平】