静岡県掛川市で12日に始まったALSOK杯第74期王将戦七番勝負の第1局は、類型の少ない相掛かりの力戦になった。立会の森内俊之九段は、藤井聡太王将(22)が12手目に4二玉と上がった手に対し、「(左の銀を使えないので)角道を開けない将棋とは相性が良くない。マイナーな定跡で意外な進行。両者の研究がどこまで進んでいるのか気になる」と、序盤からの駆け引きに注目した。
27手目に永瀬拓矢九段(32)が指した1五歩が公式戦の前例にない手で、早くも未知の戦いに入った。ただ、わずか8分の考慮時間に解説の神谷広志八段は「研究の範囲だろう」と驚く。藤井王将が40分考えて同歩と応じると、永瀬九段はまたもや7分の短考で8七歩と8筋を補強した。
これにも藤井王将の手が止まり、2手連続の長考に。結局、考慮時間は54分に及び、藤井王将は3四歩と指し、ようやく角道を開けた。
これを見た永瀬九段も1時間の昼食休憩を挟む55分の長考で1四歩と端攻めを継続。藤井王将は決戦を避け、角交換から金を使って端を守る辛抱の防戦策を採った。「藤井王将は攻める手がかりがないので、より良い形で相手の攻めを待ち、反転攻勢につなげたい」と森内九段。
永瀬九段は3七桂と跳ね、藤井王将は1日目の最長となる1時間3分の長考で2四歩と受けた。快調に攻め続ける永瀬九段は35分考え、指し手を封じた。【新土居仁昌、武内亮】