海で起こる事件や事故の緊急通報電話番号「118」が2000年に導入され今年で25年。いまだに、いたずらや無言電話など緊急性がない通報(無効通報)が全国的に全体の9割以上を占め続けている。1月18日の「118番の日」を前に、愛知と三重の海域を管理する第4管区海上保安本部(名古屋市)を取材し、その理由などを探った。
「118」は海上での事件、事故だけでなく、巧妙な密輸入や密航などにも対応する緊急通信。24年に全国で39万9781件の通報があったが、約99%の39万4989件が無言電話(19万7251件)や間違い電話(11万4668件)などの無効通報だった。
愛知、三重では118番通報すると、名古屋市の第4管区海上保安本部運用司令センターにつながる。第4管区の24年の緊急通報電話は3万1076件。98・5%の3万618件が無効通報で、人身事故や船舶事故など緊急性を要した通報は458件しかなかった。こうした傾向は運用開始時から大きく変わっていないという。
ちなみに第4管区の無効通報の内訳を見ると、最多は無言電話の1万9641件。間違い電話が5978件、着信時に電話を切る「即断」が4428件でこれに続いた。
無言電話が圧倒的に多い要因の一つは、スマートフォンの緊急通報機能。機種によってさまざまだが、ボタンを長押ししたり、何度も押したりすると「118」や「110」につながる仕組みになっている。ポケットやカバンの中で持ち主が知らぬ間に誤作動しているケースがあるというわけだ。
スマートフォンから緊急通報があり、通報者の反応がなかった場合、海保などはどう対応するか。電話をかけ直し、GPS機能で通報者の位置を確認して出動することもある。
運用司令センターで勤務経験のある四日市海上保安部警備救難課の尾関辰徳課長は「反応がない場合、危険な状況に陥っているのか、それとも誤発信か判断しづらい」と話す。それでも人命に関わる可能性がある以上、放置はできない。
一方、間違い電話では、消防救急の「119」、消費者ホットライン「188」や時報「117」と押し間違えのケースが多いという。
いたずら電話では、「船が転覆している」との118番通報でヘリや船舶が出動して周辺の捜索や航行する船舶の聞き込みをしたが、発生を確認できなかったケースもあった。
こうした無効通報が減らない背景には認知度の低さがある。10年度に1月18日を「118番の日」に定めてイベントを開くなどしているが、まだ「118」について電話番号すら知らない人もいるという。
第4管区は18日、鳥羽市中之郷岸壁に停泊する巡視船いすずで救難訓練を公開し、見学者に周知活動を実施。また、近くの鳥羽水族館でも海上保安庁のキャラクター「うーみん」が観光客らに啓発ビラを配布する。
尾関課長は「緊急性のない電話が多いと、救助しなければいけない通報への対応が難しくなる。周知活動を通じて認知度を高め、118を適切に使ってもらいたい」と話している。【渋谷雅也】