福岡県久留米市出身の俳優、田中麗奈さんが主演を務める映画「恋ほおずき」が筑後・朝倉地域で撮影されることになり、田中さんや浜本正機監督らが15日、久留米市の原口新五市長を訪ね、映画への思いなどを語った。原作は諸田玲子さんの同名時代小説で、浜本監督は映画について「福岡から発信する普遍的なテーマの時代劇」と語る。
原作では江戸時代、非合法だった人工妊娠中絶を担った女医者、江与を主人公に、愛や女性の権利などが描かれている。
脚本も担当する浜本監督は、妻の薦めで原作に出合った。「すごくいい本だが、脚本に起こすことが難しく、14、15年関わっている」という。東日本大震災や新型コロナウイルス禍を経る中で脚本を書き、映画では原作で描かれた問題を基本にしつつ「人は一人では生きていけない。大事な人とどう向かい合っていくのかを表したい」と話す。
時代劇の撮影場所はセットなどの関係で京都など全国でも限られ、筑後・朝倉地域での撮影は異例。しかし作品の鍵となる田んぼの中を主人公が歩く場面の撮影場所を探していた浜本監督が、久留米市田主丸町などの広々とした田園風景を見て感動。耳納連山や筑後川、前向きな人々にもほれ込み、筑後・朝倉地域をロケ地に選んだ。2023年の大雨などで被害を受けた同地域で制作することで、被災地を元気づけ、地域に貢献したいという思いも込め、「地域の方々に愛してもらえる映画を撮りたい」という。
主演の田中さんは「自分が生まれ育った久留米市で映画の撮影ができるのは夢のよう。筑後・朝倉地域のすてきな所で撮影することで、皆さんに元気が沸いてきたり、他地域の方が訪れたりするきっかけになれば幸せです」と意気込む。
すでに久留米市に制作会社を設立し、ロケは筑後・朝倉地域の13自治体を候補地に3月ごろから始め、公開は26年の予定だ。【高芝菜穂子】