三菱UFJ銀行の東京都内の支店の貸金庫から金品が繰り返し盗まれた事件で、窃盗容疑で逮捕された元行員の今村由香理容疑者(46)が、主に営業時間外に顧客の金品を盗んでいたことが捜査関係者への取材で判明した。今村容疑者は投資などで多額の損失を抱えており、貸金庫の管理を担当する立場を悪用し、損失を補っていたとみられる。
捜査関係者などによると、今村容疑者は遅くとも15年ほど前から競馬の馬券購入などで金銭を浪費。約700万円の借金を抱え、2013年8月に東京地裁に民事再生法の適用を申請し、認められた。
その後、20年4月ごろに三菱UFJ銀行の江古田支店で貸金庫業務の管理を任されるようになった。江古田支店と合併された練馬と、次に異動した玉川の2支店での約4年半で、顧客60人以上の貸金庫から、現金は約10億円、金塊は時価総額で約7億円以上を盗み出していたとされる。
今村容疑者は、支店で保管していた「予備鍵」を使って貸金庫を開け、顧客の金品を盗んでいたとみられる。警視庁の調べに「主に(支店窓口の)営業が終わる午後3時以降に、貸金庫室に忍び込んでいた」という趣旨の供述をしているという。
また支店内では、防犯カメラのモニターを常に監視できる立場でもあった。金品を盗み出していた貸金庫を利用する顧客が来店した際には、モニターでいち早く気づき、貸金庫システムの電源を切って故障を装うなどして発覚を回避していたという。
事前に顧客の来店を把握した時には、別の貸金庫から金品を一時的に移して補塡(ほてん)し、被害に気づかれるのを防いでいたとみられる。
今村容疑者は当時、外国為替証拠金取引(FX)への投資や競馬などで約10億円の損失を出していたとされ、盗んだ金品で穴埋めしていたとみられる。
今村容疑者は24年9月下旬ごろ、支店長代理を務めていた練馬支店で、男性顧客2人が利用する貸金庫から、金塊あわせて約20キロ(時価総額約2億6000万円相当)を盗んだとして逮捕された。「間違いない」と容疑を認めているという。【遠藤龍】