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「自分たちがやるしかない」 中学生5人、バケツリレーで延焼防ぐ

毎日新聞 2025年1月16日 18時53分

 鳥栖・三養基地区消防本部は15日、佐賀県鳥栖市内で2024年11月下旬に発生した火災で、初期消火をして周辺への延焼拡大を防いだとして、県立香楠中の生徒5人に感謝状を贈呈した。

 感謝状が贈られたのは、いずれも同中3年で同じクラスに在籍する城﨑望実さん▽森﨑陽菜さん▽深川蒼太さん▽田渕空さん▽松川璃久さん――の5人。

 火災は24年11月28日午後4時半ごろ、鳥栖市の住宅の庭で発生。住民の80代男性が縁側に置いた椅子の上でカセットコンロの点火状況を確認していたところ、コンロから火が上った。男性があわてて椅子ごと庭に放り投げたところコンロのカセットボンベが爆発し、椅子と庭にあった原付バイクの一部を焼いたという。

 下校中だった城﨑さんと森﨑さんが煙と臭いで火災に気付き、続いて爆発が起きて炎が上がったため、後ろを歩いていた田渕さんら3人に声を掛けて道路向かいの現場に駆けつけたという。男性と共に家にあったバケツ2個を使って、室内の手洗い場からバケツリレーをして火を消し止めた。一時は生徒らの身長ほどの炎が上がっていたという。男性が左こめかみに軽いやけどを負ったものの、在宅していた妻にけがはなかった。

 同消防本部によると、同4時44分の通報を受けて7分後には現場に到着したが、既に鎮火していた。現場は住宅が密集し、当時は強風注意報も出ていたため、最悪の場合は周辺への延焼の可能性もあったという。出動した寺崎浩二・指揮隊長(51)は「到着した時には鎮火状態だった。5人の初期消火のお陰で被害の拡大を未然に防げた」とたたえた。

 贈呈式では、船津直樹消防長が「冷静で適切な判断により、迅速かつ勇気ある連携が取れた初期消火活動で建物への延焼を防ぐことができた。行動が遅れていたらさらなる被害へ発展していた恐れがある」と感謝を伝えた。5人を代表して城﨑さんが「人の命を救えてよかった。これからもいろんな人の役に立てるような人になりたい」とあいさつした。

 贈呈式後、松川さんは「周りに人がおらず、自分たちがやるしかないと思った。バケツリレーで冷静な消火活動ができた」と振り返った。深川さんも「火災で住民の命を救えたことがうれしかった。これからも町の危険を察知して安全を守っていければと思う」と語った。【斎藤毅】

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