福井市で39年前、中学3年の女子生徒(当時15歳)が殺害された事件で、殺人罪で服役した前川彰司さん(59)のやり直しの裁判(再審)について、検察側は16日、有罪主張を維持する方針を示した。新たな証拠は請求しないとしているため、前川さんが再審無罪となる公算が大きいことに変わりはない。記者会見した弁護側が明らかにした。
前川さんは1審・福井地裁(1990年)で無罪となったが、2審・名古屋高裁金沢支部(95年)で懲役7年の逆転有罪となり、最高裁で確定。昨年に再審開始が確定し、この高裁支部での裁判がやり直される。再審公判は3月に即日結審する見通しだが、日程はまだ決まっていない。
弁護側によると、この日は裁判所と検察側、弁護団の3者が集まる2回目の非公開協議があり、検察側は確定審などで提出していた従来の証拠に基づき、前川さんは有罪だと主張すると表明したという。
一方、弁護側は再審請求審で検察側から開示を受けた捜査書類など169点について、再審公判でも証拠とするよう求めたことを明らかにした。
これらを根拠とした再審開始決定は関係者証言の信用性を否定し、「前川さんを犯人と認めることはできない」と認定。これに対し、検察側は新たな証拠を請求しない方針を示しており、前川さんが再審無罪となる公算は大きい。
弁護団の吉村悟弁護士は会見で、有罪主張を維持する検察側の対応について「新たな証拠を出さないのであれば矛盾した態度だ。一日も早く無罪判決を得たい」と語った。
一方、報道各社の取材に応じた名古屋高検の浜克彦次席検事は「主張は再審公判で明らかにする。適切に対応したい」と述べるにとどまった。
この事件は86年3月に発生。前川さんは約1年後に殺人容疑で逮捕されたが、一貫して無実を主張していた。2回目の再審請求で、高裁金沢支部が昨年10月に再審開始を認める決定を出した。検察側が決定に異議を申し立てずに再審開始が確定した。【萱原健一、阿部弘賢、道下寛子】