今季は異例とも言えるインフルエンザの感染拡大が続いている。背景に何があり、何に気をつければいいのか。
「子どもから高齢者までまんべんなく感染している」。日本感染症学会インフルエンザ委員長を務める倉敷中央病院(岡山県倉敷市)の石田直副院長(呼吸器内科)は語る。
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの三つの型がある。現在流行する株は、2009年に新型インフルエンザとして世界的大流行(パンデミック)を起こしたA型のH1N1の一つ「AH1pdm09」が9割以上を占める。この株は強い感染力で知られるが、大阪大の忽那賢志(くつなさとし)教授(感染症学)は、拡大の背景に複数の要因を挙げる。
一つは、流行シーズンの立ち上がりが早かったことだ。インフルエンザの感染ピークは例年は1、2月ごろだが、今シーズンは11月ごろから流行の兆しがあり、帰省など、1年の間でも特に移動が増える年末に大きなピークを迎えた。
二つ目は集団免疫の低下だ。忽那さんは「新型コロナウイルス禍では感染症対策がしっかり行われ、人の移動も少なかった。飛沫(ひまつ)感染する他の感染症も減り、結果としてインフルエンザに免疫を持たない人がかなり増えた」と説明する。
“インフル慣れ”していない上、新型コロナが季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」に位置づけられたことで感染対策が緩和されて人流が復活し、感染が急拡大したというのが、忽那さんの見立てだ。
その上で、新型コロナ感染も増えていることや、抗インフルエンザ薬が不足している状況などを指摘。症状がある場合は医療機関を受診し、高齢者や妊婦など重症化リスクが高い人はワクチン接種を受ける、人混みではマスクを着用するなどの感染対策を呼びかける。
石田さんも「肌感覚としてややピークアウトしたようだ」としながらも、昨年はA型の流行が落ち着いた後の2月にB型がはやったことから「せきエチケットや手洗いなどを怠らないで」と注意喚起した。【菅沼舞】