あれから6年を迎えようとしている。2019年2月24日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非を問う県民投票が実施された。
投票結果は「反対」が多数を占めたが、政府は工事を続行した。
「県民投票があったことを思い出してもらい、辺野古基地問題を、沖縄から音楽・文化を通して訴えていきたい」
当時、県民投票を呼びかけた大学院生の元山仁士郎さん(33)は節目の日に、今年で7回目となる音楽祭を開催する。【宮城裕也】
音楽、文化でつながろう
元山さんは「『辺野古』県民投票の会」の代表を務め、県民投票を実施するための条例制定に向けて9万人あまりの有効署名を集めた。
19年2月の県民投票では、埋め立て反対が7割超だったが、埋め立て工事が今も進む。埋め立てに必要だった県の承認は国が代執行し、24年12月28日には、懸案となっていた軟弱地盤の改良工事に国が着手した。
元山さんらは19年の県民投票の前にトークイベントや音楽ライブを同時に実施する「県民投票音楽祭」を開いた。その後も県民投票の意義や平和について語り、音楽を奏でる「2・24音楽祭」として毎年開催している。
しかし、県民投票後も沖縄の民意が尊重されたとは言いがたい状況は続く。
「軍事による備えのみならず、別の手段での相互理解こそ必要だ。脅威をあおるだけではなく、音楽や文化による人と人とのつながりこそ求められる」。元山さんはこうした理由から音楽祭の開催を重ねている。
今年は「基地の街」で
これまで音楽祭は、那覇の中心市街地や、安全保障環境の悪化を理由に自衛隊配備が進む石垣市などで開いてきた。戦後80年を迎える今年は米軍嘉手納基地を抱える自治体の一つ、沖縄市を会場に選んだ。
米軍統治下の頃、沖縄市の中心部「コザ」は基地の門前町として米兵相手の飲食店などが栄えた。一方、米軍関係者による相次ぐ事件事故で虐げられた住民たちの暮らしがあった。
音楽祭はそんな基地の街で、基地へと続くメインストリート「ゲート通り」を封鎖した特設ステージや広場が舞台。沖縄民謡歌手の古謝美佐子さんら沖縄出身アーティストのほか、北京や香港、台湾のアーティストが共演する。
「イムジン河」(1968年)の日本語訳詞を担当した松山猛さんも出演する。「イムジン河」は朝鮮戦争で南北に分断された朝鮮半島を描いた歌だ。
朝鮮戦争では嘉手納基地から飛び立った米軍機による爆撃が行われた。元山さんは「アジアの平和を考える時、嘉手納基地は無視できない存在という歴史的な事実を踏まえた」と基地のそばで音楽祭を開く意義を強調する。
トークイベントでは、沖縄市出身でロックバンド「オレンジレンジ」のベーシストのYOHさんや美術家の照屋勇賢さん、お笑い芸人のせやろがいおじさんなどが「コザの街」を舞台に基地と芸術、東アジアの平和などをテーマに語り合う。
元山さんは「『緊迫している』と言われる状況のなかで、隣国・地域と理解し合う取り組みを粘り強く継続していきたい。沖縄や日本にある基地が想定する『敵』や『味方』を、音楽という手段を通して知り、話しながら考えることができれば」と期待を込める。
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「2・24音楽祭」(実行委主催)は2月23~24日に沖縄市の「コザ・ミュージックタウン音市場」で開かれる。入場無料で、オンライン配信もある。
現在、開催費用をクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/809341/view)で募っている。