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冬に不調の「冬季うつ」 別名「ウインター・ブルー」の対処法は?

毎日新聞 2025年1月19日 11時30分

 20日の「大寒」が近づき、1年で最も寒さの厳しい時期となった。「なんだか気分が落ち込む」「寝ても寝ても、眠い」「食欲が増して太った」など、体の不調を感じている人もいるかもしれない。

 「ただ寒さが苦手なだけ」と片付けてしまいがちだが、それは「冬季うつ」の可能性があると専門家は指摘する。

過食と過眠が特徴 一般的なうつ病とは逆

 冬季うつは「ウインターブルー」とも呼ばれ、冬に不調が表れる季節性の気分障害だ。冬の日照時間の短さが関係していると考えられている。日光を浴びる時間が減ると、睡眠リズムを調整するホルモンや精神を安定させる神経伝達物質に影響するという。

 うつ病の症状は一般的に、食欲がなくなって体重が減り、昼夜を問わず眠ろうとしても眠れなくなることが多い。

 しかし、冬季うつの場合は逆で▽通常よりも明らかに食欲が増加し、炭水化物や甘いものが欲しくなる▽夜の睡眠時間が長くなり、日中の眠気も強く、昼寝や居眠りが増える――などが挙げられる。

朝日を浴びて、規則正しい生活を

 東京・神奈川を中心に展開する心療内科「こころみクリニック」の大澤亮太医師によると、冬季うつの改善には、規則正しい「生活リズム」と、適度に人と接する「社会的刺激」の両輪を意識することが大切だという。

 規則正しい「生活リズム」の第一歩として、できるだけ起床時間は固定することが大切だ。大澤さんは「起きる時間を一定にして、休みの日でもせいぜい1時間ぐらいの差にとどめることが大事」と話す。

 起きたら朝日を浴びることが望ましいが、人工的な光でも効果はあるので、起床時に部屋の電気をつけるだけでもいい。近所の散歩や朝のゴミ出しといったルーティンで生活リズムを整えるのもお勧めだ。

 日中に光を浴びることで、自律神経や精神状態に作用する脳内の「セロトニン」が分泌される。日中に分泌されたセロトニンは、夜になると睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」の分泌を促し、夜の眠りを誘う。

 セロトニンは、肉や魚、乳製品や大豆製品に多く含まれるたんぱく質の一種「トリプトファン」から合成されるので積極的に取りたいところだが、過剰に摂取しなくても、日本人の平均的な食生活で十分な量が取れている。そのため、大澤さんは「規則正しく、バランスよく食べることの方が大切です」と話す。食べたものを記録できる管理栄養士監修のアプリなどを利用するのも一つの手だ。

対人関係も“質と量”のバランスが大事

 「社会的刺激」とは対人関係のことで、キーワードは「多すぎず、少なすぎず、ほどほどに」。質と量を見極めながら、適度に人と接することが大切だという。

 大澤さんは「人と会う予定を詰め込みすぎると、社会的刺激が強くなりすぎるし、ずっと一人でいるのも苦しくなることがある。人との接点で心身のバランスを崩さないよう、普段の生活の中で『適度な刺激』を意識することが大切です」と話す。

 生活習慣を見直しても、冬季うつが改善しない場合には「気分の波がある人は、冬季うつになりやすい傾向がある。不調の裏に、深刻なそううつ病が隠れている可能性もあるので、生活に支障が出て苦しい時には医師の診断を受けてほしい」。【杉田寿子】

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