千葉市で栽培したブドウでワインを醸造し名産品に育てようと、同市若葉区で新しいプロジェクトが進行中だ。手がけるのは住宅・不動産、インテリアなどを展開するトミオホールディングス(HD)の大沢成行(しげゆき)社長(59)と同社ワイナリー事業部の大塚裕敬さん(44)。自社農園には既にブドウの苗木を植え付け、8月には市内初のワイン醸造所を開業予定だ。ブドウの木は寿命が長いことから100年後も見据え、「千葉をワインのまちに」と構想を練る。【大槻英二】
なぜ千葉市でワインなのか? 同社が主に手がけるのは注文住宅。大沢社長によると、家を建てた人から「千葉はいい所」とよく言われるものの、具体的に何が、と掘り下げると、県内の特産品として落花生やナシなどがあるが、市内に限るとほとんど思い浮かばなかった。そこで市を代表するものをと考えを巡らせて、ワインを思い立った。
ワイン販売などに約20年携わり、ワイナリー事業を立ち上げるために昨年入社した大塚さんによると、千葉市は気候や土に恵まれ大消費地にも近いことから野菜や米作りは盛んだが、果実を栽培する農家は少なく、ワイン醸造所もなかったという。
昨年4月、若葉区下田町に約40アールの自社農園を開き、カベルネ・ソービニヨンやメルロー、シャルドネなど欧州系7品種の苗木約300本を植えた。高温多湿な気候に対応するため、棚仕立てで栽培。梅雨時には病害虫に悩まされたが、傷んだ葉を一枚一枚取り除いた。果樹は順調に生育中という。今年は雨よけも付ける計画だ。
同区高品町にある本社敷地内にはワイン醸造所を整備中で、完成すれば「千葉ワイナリー」と名付け、醸造免許を取得予定。自社のブドウはまだ収穫に至らないため、今年は8月以降、県内の農家が育てたブドウを使ってワイン造りを始める。
市が2026年に予定している「千葉開府900年」記念事業を盛り上げるメンバーにも登録し、その年には自社農園で初収穫したブドウを使ってワインを醸造する計画だ。昨秋には、今春開く第2農園(約30アール)の整備費などを調達するため、クラウドファンディングを実施。目標の100万円を上回る約235万円が集まった。県内全体では横芝光町や多古町など数カ所にワイナリーがあり、将来的には県産ワインを集めたイベントや、国内外のワインコンクールでの金賞受賞を目指す。
大沢社長は「ワインを造ると聞くと、皆さん、笑顔になる。醸造だけのつもりだったが、胸を張って『千葉市産ワイン』を名乗るにはブドウから育てた方がいいと聞き、取り組むことにした。何十年かかるかもしれないが、いいワインを造りたい」。ブドウ栽培は初めてという大塚さんは「プレッシャーは大きいが、山梨県や県内の農家などからアドバイスをいただきながら、人々に夢を与えられるようなブドウ園やワイナリーにしたい」と思い描く。