直径約2センチのボルトとナットの形の組み合わせ。カカオ分の高いクーベルチュールチョコを使用した程よい甘さの一口サイズで、実際に締めることもできる精巧さと遊び心が最大の魅力だ。
「ネジチョコ」の製造元、「オーエーセンター」(北九州市小倉北区)は、通信機器販売が本業だ。携帯電話販売店にカフェを併設したのを機に飲食事業に乗り出し、2006年に洋菓子店「GRAN DA ZUR(グランダジュール)」(北九州市小倉南区)を開業した。
15年7月、「官営八幡製鉄所」の関連施設(北九州市八幡東区)が「明治日本の産業革命遺産」の構成遺産として世界遺産に登録されると、地元の商工会議所などから「鉄の街・北九州らしいお土産を作ってほしい」との要請が舞い込んだ。
3Dプリンターで製品と同じ形のモデルを作り、シリコンで型を起こした。本来のネジ山は鋭いことで外れないようになっているが、チョコで再現すると型抜きの際に崩れてしまう。そこで丸みを持たせた上でカチッと締まる形にし、特許も取った。
16年2月の販売開始後、すぐに人気に火が付き、定番の土産になった。20年には1日に3万個を生産できる工場「ネジチョコラボラトリー」を設けたが、既に手狭だという。
市内に本社があるTOTOやシャボン玉石けんなどとのコラボ商品や、産学官連携商品も次々に生まれ、ネジチョコとサブレで飛行機や新幹線などを組み立てられる「メカサブレ」も展開。SNS(ネット交流サービス)上では「くっつく」「引き締める」などと験を担ぎ、バレンタインや受験シーズンの贈り物としても注目を集める。
「メード・イン・ジャパン」の技術力を連想させるお菓子として海外からの引き合いも増えてきているという。広報担当の坂山智哉さん(27)は「北九州だけでなく、日本を代表するお土産に」と将来を見据え、気を引き締める。【成松秋穂】