宮城県沿岸の小さな町を舞台にした映画「サンセット・サンライズ」が全国公開され、ロケ地に近い石巻市のイオンシネマ石巻で18日、舞台あいさつがあった。主演の菅田将暉さんと岸善幸監督=山形県最上町出身、脚本の宮藤官九郎さん=宮城県栗原市出身=の3人が、東北のリアルがたくさん詰まった泣き笑いの映画について語り合った。
主人公は菅田さん演じる東京の釣り好きサラリーマン。新型コロナウイルスの感染が拡大し、リモートワークが導入されたのを機に三陸の田舎町に「お試し移住」し、地元の人たちとドタバタ劇を繰り広げる。コロナ禍で広がった人と人の距離。都市と地方で生きる者の見えない心の距離。それらが物理的に近づくことで変化していく。
原作は岩手県一関市出身の楡周平さんで、主な撮影は宮城県気仙沼市と岩手県大船渡市で行われた。「ドンコ汁」や「モウカノホシ」など三陸グルメが多数登場し、「東北あるある」で笑いを誘いながらも過疎や空き家問題、震災の傷も織り込まれ、被災地・東北で生きる人と、その姿を遠くから見守ってきた人たちとをそっとつないでくれるような温かい映画になっている。
岸監督は、震災に触れる場面の一つ一つを宮城で被災したスタッフに確認しながら進めたといい、上映後の舞台あいさつで「被災地の方々がどう受け止めるのか気にしながら撮影していたので、皆さんから拍手をもらい笑ってもらえて本当にうれしい」とほっとした様子で語った。
宮藤さんは「(朝ドラの)『あまちゃん』を書いた時に『なんで岩手なの』『次は宮城で』とすごい言われたので、やっとかなった」と語り、物語の重要な場面は「ラジオの取材で2020年3月に石巻に来た時、現地の人に聞いた言葉がセリフのベースになっている」と明かした。
大阪出身の菅田さんは、遊漁船の船長役を務めた中村雅俊さん=宮城県女川町出身=が歌う場面を振り返り、「歌詞の『日は昇り』の『ひ』を絶対『す』と言っている。もうちょっと『ひ』に寄ってもいいんじゃないかとも思ったが、音の響きが好きでした」と方言の心地よさに触れ「東北にまた来たいし、映画を見た人が足を運んで多くの人でにぎわってくれたらいい」と笑顔で語った。【百武信幸】