大分県内の県立高校が2023年に実施した推薦入試で、部活動を強化するため、事前に有力な中学生をリストアップし、入学の意向を示して受験した場合には一定の得点を上乗せして合格に有利な扱いをしていたことが、文部科学省への情報公開請求や県教育委員会などへの取材で分かった。外部からの通報で事態を知った文科省は県教委に対する調査を実施し、24年に「不適切な運用」として改善を求めた。
県教委も取材に対し、「推薦入試の裁量は学校側にあるが、公表していない方法で選抜していたことは、不適切で妥当性に乏しかった」としている。県教委は文科省の指摘を受けた後、県立の全高校に対し、明確な選抜基準に基づいて適切に推薦入試を運用するよう注意喚起した。
部活などの実績を評価する県立高の推薦入試は、例年1月に願書などを受け付け、2月に面接や小論文による試験を実施する。面接や小論文の得点に、中学校長が提出する調査書と活動実績を点数化して加えた合計点数で合否を判定している。
文科省や関係者によると、この高校では23年の推薦入試に向け、校長が内部で「強化部枠」の部活を決定。強化部に指定された部活の顧問は、示された人数枠に沿って全国大会出場など実績のある中学3年生をリストアップし、高校の校長が中学校長を通じて生徒の入学意向を確認していた。
リストアップされた生徒が入学の意向を示して推薦入試を受験した場合には、他の受験生には与えない「総合評価点」を一律に30点加えていた。この高校の推薦入試の合計点数は110点で、うち3割近くに当たる得点をリストアップされた生徒にのみ与える運用だった。
23年の推薦入試は約40人の募集枠に対し、約50人が受験した。「強化部枠」は募集枠の約9割を占め、結果的に、受験した生徒全員が合格したという。
外部通報で事態を知った文科省は県教委に対する調査を実施し、こうした運用がされていた事実を確認。23年の入試実施要項は、推薦入試の選抜方法を「調査書、推薦書、面接、小論文の結果を資料として行う」としていることに照らし、この高校が特定の受験生に総合評価点を一律に付与したのは「実施要項における選抜方法を逸脱する行為」と指摘した。
また、募集枠の約9割を強化部枠として優遇する運用は公表していないことから「公平・公正に評価してもらえるであろうという(他の受験生の)期待に背くものだ」として不適切と判断し、24年1月に県教委に改善を求めた。【李英浩、石井尚、高橋慶浩】