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入学金の二重払い、大学生の4人に1人が経験 「奨学金に回せれば」

毎日新聞 2025年1月22日 17時38分

 第1志望の合否発表の前に滑り止めの大学などに入学金を納める「二重払い」の実態について、有志の若者グループなどが調査したところ、大学生の4人に1人が経験していることが判明した。受験生のいる世帯にとって数十万円、一部の私立大医歯系学部で100万円以上にもなる入学金は経済的な負担になっている可能性があり、このグループは各大学に入学金の納付期限の延長や合格確定の早期化などを求めている。

 入学金の納付期限は大学によって異なるため、複数の大学を受験した場合、志望度の高い大学の合否判定が出る前に、既に合格している大学の納付期限を迎えるケースがある。滑り止めの大学に入学金を支払った後、本命の大学に合格して手続きを進めると二重払いとなる。

 文部科学省によると、2023年度の大学入学者の入学料は、国立大が28万2000円で、公立大は地域外からの入学者の平均で37万4371円。私立大は平均で24万806円だが、学部によって差がある。

 調査は、入学しない大学に入学金を支払わなくても済むよう求めるオンライン署名を4年前に立ち上げた若者グループ「入学金調査プロジェクト」が、若者に政治参加を呼びかける団体「NO YOUTH NO JAPAN」の協力を得て実施。直近3年以内に大学受験を経験した全国18~23歳の大学生の男女1039人を対象に、インターネットで入学金の納入期限の早さによる二重払いの経験率などを尋ねた。

 その結果、実際に入学金の二重払いをした大学生は27・0%に上った。二重払いにならないよう、入学するかわからない段階で入学金を払う可能性のある大学を選択肢から外した人も13・6%いた。

 入学金の二重払いを「とても問題だと思う」「問題だと思う」と回答したのは計87・7%。二重払いを「とても問題」と答えたのは、受験時の家庭の暮らし向きに「ゆとりがあった」と回答した人のうち36・8%だった一方、「苦しかった」だと52・2%に上り、家庭の経済状況により差が見られた。

 大学合格後、受験生が支払う授業料や入学金などの前納金を巡っては、06年に最高裁が消費者保護を図った消費者契約法施行(01年4月)以降の入試で3月末までに入学を辞退した場合、大学側は原則として授業料の返還義務を負うとの基準を示したものの、入学金については返還義務を認めていない。

 団体のSNS(ネット交流サービス)アカウントには当事者からの意見も寄せられている。2校に計80万円を支払ったという25歳の社会人からは「特別裕福な家庭ではなく、奨学金も借りており、卒業した今も奨学金を返済している。あの80万円がなければ、その分を奨学金に回せればと何度も思いました」と投稿があった。

 24歳の社会人は「家族に対して罪悪感がありましたが、第1志望に絶対受かるから払わなくていいと言える自信がなく払ってもらいました。とても申し訳ない気持ちでいっぱいでした」と振り返った。

 グループのメンバーで団体職員の五十嵐悠真さん(25)は記者会見で「全ての若者が家庭の状況によらずにチャレンジできる社会を求めたい」と話した。今後、文科省などに納付期限延長などを要請することも検討しているという。【井川加菜美】

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