防衛省は今月から、自衛隊員の懲戒処分や刑事処分を公表する際、処分対象者の性別を一律に特定しない運用を始めた。性別については広報文に記載せず、個人の特定につながらない範囲で問い合わせに回答する運用が定着していたが、それを改める。性的指向や性自認への配慮が理由としている。
陸上幕僚監部は22日、陸自隊員を同日付で減給10分の1(1カ月)とした処分を公表した。業務とは関係ない柔道整復師資格の専門学校に通うため、休暇を取得せずに1時間未満の欠勤を202回、1時間以上2時間未満の欠勤を7回、それぞれ繰り返したのが処分の理由だった。
広報文に記載された処分対象者は「中央業務支援隊 2等陸曹 47歳」。性別について問い合わせると、陸幕広報室は「性的指向や性自認については、プライバシーに関することを含め難しい問題があると考えており、こういった観点から省として性別の公表を控える」と説明した。
陸海空の各自衛隊の処分に関する広報文には、処分対象者の所属、階級、年齢▽処分の理由▽処分年月日▽処分内容――といった事項が記載されている。性別は記載せず、口頭で回答するのがこれまでの運用だった。関係者によると、この運用を改め、性別を明らかにしないよう求める指示が17日、防衛省内局の人事教育局長名で関係部署に伝えられたという。
同じ17日に陸幕が公表した書類送検事案(2024年11月分)には、陸自高等工科学校に通う10代の生徒によるわいせつ事案が含まれていた。同校は「17歳未満の男子」を対象に生徒を募集している、いわゆる男子校だが、書類送検された生徒の性別は明らかにされなかった。
こうした対応は、LGBTQなど性的少数者の権利に対する社会の意識の高まりが背景とされる。一方、防衛省内には「国民への説明責任を十分に果たせるのか」と疑問視する見方もある。【松浦吉剛】