警察庁は23日、捜査員が身分を偽って闇バイトに応募し、犯人グループに接触する新たな捜査手法「仮装身分捜査」の実施要領を策定した。適用範囲が拡大しないように、対象事件は闇バイトが絡んだ強盗や特殊詐欺に限定。捜査は都道府県警本部長が指揮し、計画書を承認する形で進める。
仮装身分捜査について政府は2024年12月、現行法の範囲内で実施可能な在り方を検討し、ガイドラインなどで明確化した上で、早期に実施するとしていた。実施要領が策定されたため、今後は、準備が整った都道府県警から順次、実施できることになる。
実施要領では、仮装身分捜査は、他の方法で、犯人を摘発し犯行を抑止することが困難な場合に、相当と認められる限度で実施するとした。
対象事件は、インターネットを通じて実行役が募集されている強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺のほか、闇バイトの募集に適用する職業安定法違反(有害業務の紹介)など、密接に関連する犯罪を含む。
捜査は都道府県警のトップの本部長が指揮する。現場が勝手に判断しないように、捜査ごとに内容を記した計画書を本部長が承認しないと実施できない。定着するまでは実施前に警察庁に報告するよう求めた。
犯罪グループから身分証の提示を求められた場合には、作成した偽の身分証を提示する。捜査員のものとは異なる顔や氏名、住所を記した身分証の画像を用意する。警察や委託先の技術を使い「フェイク画像」のような架空の顔写真をつくるという。
偽の身分証は捜査のために必要な範囲で使用するため、原則として犯人以外には提示しない。犯人側が偽の身分証を悪用するのを防ぐため、身分証の実物は相手側に渡さない。
また、捜査によって新たな犯罪被害が生じることがないよう、被害発生前の摘発を求めた。犯人以外の人の日常や社会生活に支障が生じないよう配慮し、捜査員の安全確保に万全を期すことも記載した。【山崎征克】