ネット上にはびこるうそや誤情報などのフェイクニュースをどう見破るか。その新たな対策として重要性が高まる「ファクトチェック」について大学生らと考える講演会が17日、静岡大で開かれた。メディアリテラシーの普及に取り組む「日本ファクトチェックセンター(JFC)」の古田大輔編集長が講師を務め、フェイクニュースに惑わされないための考え方などを伝授した。【最上和喜】
ファクトチェックは不確かな情報や根拠のないデマ、陰謀論に対する「事実の検証」の意味。客観的、科学的根拠に基づいて事実確認し、言説が正確かどうかを判定するジャーナリズムの一手法だ。古田さんは朝日新聞記者やネットメディア編集長などを経て2022年10月、JFCの設立に伴い編集長に就任した。SNSなどで拡散される真偽不明な情報を検証し、その過程や結果をサイト上で公開している。
講演会では冒頭、国際大学(新潟県)の研究所「グローコム」とJFCが2万人を対象に実施したファクトチェックに関するアンケート調査の結果を分析。国内で拡散した15件の偽・誤情報について一つ以上見聞きした人は37%に上り、うち過半数が「(情報は)正しい」と回答したといい「気づかないうちに山のように偽・誤情報に接していて、だまされまくっていることをまず認識してほしい」と語りかけた。
古田さんは、そうした背景に、検索履歴などに沿ってユーザーの価値観に合う情報が優先的に表示される「フィルターバブル」や、SNSなどで自分と近い意見の人とだけ交流した結果、考えが偏る「エコーチェンバー現象」があると指摘。「そのせいで全ての人が持っているバイアス(先入観)が強化されてしまう。だからこそ、相手の意見に耳を傾けて論拠を的確に理解する『クリティカルシンキング(批判的思考)』が重要だ」と説明した。
また「実践編」として、ファクトチェックに役立つ手法も紹介。写真や動画を分析して撮影された位置情報を特定する「ジオロケーション」や、ブラウザー上で特定の検索条件を設定して目的の情報にいち早くたどり着く「高度な検索」機能の使い方を詳しく解説した。
講演会に参加した静岡大1年の池沢好佳さん(18)は「情報化社会で立ち止まって考えることの大切さを感じた。これまでファクトチェックのやり方を教えてもらう機会はなかったので、正しい判断ができるように実生活に生かしたい」と話していた。