キラキラと美しく舞う雪とサンタクロース。ほほ笑ましいスノードームかと思いきや、プレゼントをポイポイと投げ捨てているじゃないか! 堺市在住のスノードーム作家・Ato1snow(アトワンスノウ)さんは、薄さ1ミリのガラスのドームに笑いと毒っ気ある世界を詰め込んでいる。【前本麻有】
プレゼントをポイポイ捨ててしまうサンタクロースの作品名は「もうプレゼントなんか配りたくない」だ。サンタも大変だなと笑える一方で、サンタとはそもそも何者なのかと考えさせられる。
作品「存在」は、クレバスを挟んで歩く男女に手をつながれた子ども。「絶対に手を離さない」と思うか、それとも何か事情があって「離してしまおうか……」と思う人もいるかもしれない。まるでホラー映画の一場面のように、胸がキュッとなる作品も多い。「作品の捉え方は自由です。人の心の内側をつつくようなものを作りたい」と話す。
大分県別府市出身、実家は玩具屋。クリスマスの時期になると、父親がサンタの衣装でプレゼントを手渡し、子どもたちが喜々としている様子を「しれっと見るしかないですよね。そういう『裏側』を見て育ってきたわけです」と笑う。
おもちゃに囲まれて育ったとはいえ、売れ筋の新商品では遊ばせてもらえず、ウオーターゲームやフロートペンといった「水の中で何か動く」ものが好きだった。高校生の時からスノードームを集め、鶴や亀がモチーフの戦前の日本製、1960~80年代の海外のものなど、今では約400ものコレクションを誇り、2013年ごろから自分でも制作を始めた。
クリスマスツリーといった冬季のモチーフや観光名所などの市販品とは一線を画す、独自の世界観を詰め込んだアートとしてのスノードーム。「夢もないし、子どもには見せにくい作品ですよね」と笑いながら自認するも、その作風は尊敬するチャプリン、マイケル・ジャクソン、手塚治虫の影響があると感じている。
3人の共通点を「人間の本質を知っていて、人間をテーマにした作品が多い。愛に満ちたものもあればことごとく残酷なものもある。未来を見据え作品を通じて警鐘を鳴らしたり、誰も見たことがないものを見せたりして驚かせ続けた」と挙げる。そして「彼らほど大勢に響くメッセージ性はなくとも、私なりの風刺、人間愛を込めています」と語る。
水が満たされたスノードームは年月とともに、減少したり変色してしまったりすることもある。それでも「今いる場所と違う世界が、手のひらで広がる感覚がある」と魅力を語り、「この限られた空間に、いかに世界をつくり込めるか」。クスッと笑えてドキッとする、かつてないスノードームを生み出していく。
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大阪市北区豊崎1のギャラリーヨルチャで2月9日(火、水、木曜休み)まで作品を展示中、2月から作品販売予定。ウェブショップのはちみせ(https://r.goope.jp/83s/)でも購入できる。
アトワンスノウ
大分県別府市出身。大学進学を機に大阪へ、現在は堺市在住。2013年ごろからスノードームの制作を始めた。