発達障害の一つである学習障害のうち、読み書きが困難な「ディスレクシア」。米俳優のトム・クルーズさんや、俳優で元米カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーさんが公表していることでも知られる。
そんなディスレクシアの人たちの世界を疑似体験できるVR(仮想現実)コンテンツを、東京・銀座の資生堂ギャラリーで開かれている「美を疑えー資生堂クリエイティブ展ー」で体験できる。
◇読み書き難しく
「ディスレクシア」は読み書きがすらすらとできない症状で、知的な発達の遅れや、視聴覚器官に障害はなく、学習の機会も十分にあるが、年齢から期待される読字、書字の能力が得られない状態を指す。
脳機能の問題で、音と文字、文字の形と意味をつなげて認識することなどに困難が伴う。
日本語圏よりも英語圏などの海外で報告される割合が高いとされるが、支援活動に取り組む認定NPO法人エッジによると、日本でも人口の7~8%が該当するとも言われる。
まだまだ認知度が低く、障害を抱える人たちの自己肯定感を下げる要因とされている。
資生堂ギャラリーで展示されているコンテンツは「もしもディスレクシアの小学生なら」。約5分間視聴することで「ディスレクシア」の世界を疑似体験できる。
ヘッドセットをかぶると小学校の教室で国語の授業を受けている風景が広がり、黒板にひらがなでクイズや詩が書かれ、取り組むよう教師から促される。
その中で「か」が「や」に、「あ」が「お」に見えたり、縦書きか横書きかを認識できなかったりすることで、理解に時間がかかる。そして周囲から批判され、焦りや疎外感を深めるという内容だ。
化粧品大手・資生堂から独立して広告やデザインなどを手掛ける資生堂クリエイティブが企画し、クリエイティブプロダクションのビービーメディアの協力で制作した。
「美」がつなぐ
「資生堂」と「ディスレクシア」。
一見して結びつかないかもしれないが、両者をつなげているのは「美」だ。
資生堂クリエイティブの小助川雅人さんは、「目に見えるものだけでなく、支え合う社会というのも『美』のひとつ。ディスレクシアの困難と、つらい気持ちを知ってほしい」と訴える。
今後はコンテンツを教育関係者向けの研修教材として利用してもらう可能性も探る。
ギャラリーにはほかに「食」や「ゲーム」、「非常時」など異なるテーマで「美」の概念に挑む展示があり、観光客や買い物客が興味深そうに鑑賞していた。
資生堂クリエイティブ展は26日まで開かれている。【山崎明子】