職員による園児への虐待が昨年発覚した栃木市都賀町の認定こども園「都賀幼稚園」(大塚英人園長)を巡り、園の元職員3人が23日夜、市内で記者会見し、園長らによる他の虐待や不適切保育を告発した。市は園に対し、指導監査しているが、元職員は「論点を間違えている。改善すべきなのは園の体質」として、保育実態についての再調査を市、栃木県に要望した。
会見したのは、同園の元職員12人が昨年12月に結成した「都賀幼稚園元職員の会」代表の出井明子さん(46)、荻原明日香さん(33)ら3人。2013年4月から23年3月まで、それぞれ2~11年間勤務していた。
告発によると、3人の在職中、園では園長らによる園児への暴行や暴言、職員不在の部屋への連れ去りが常習的に行われ、職員の多くが目撃した。21年度以降の9件の事案についてまとめた資料によると、園長が園児の頭を拳でたたく▽横になっている園児の顔を踏む▽園長の長男である職員が園児に対し「お手、おかわり」など犬扱いする――などがあり、8件を栃木市保育課に通報したという。21年以前にも不適切保育、職員や保護者へのハラスメントなどが繰り返されていたと主張した。
園側は先月開いた保護者説明会で、発覚した虐待以外の暴力行為は「一切ない」と否定していた。3人は「園長はうそをついている。これで幕引きすることはあってはならない」と元職員の会の結成と告発の理由を説明した。
同会はこの日、市、県に過去の虐待や不適切保育も含め、園の保育実態に関する再調査を求める要望書を提出、市議会にも同趣旨の陳情書を出した。出井代表は、「在勤当時、たたかれた子の手を引いて逃げるのが精いっぱいで、園側に意見するなどとてもできなかった。申し訳なかった」と涙ながらに語り、「被害児童や保護者の心痛が少しでも癒やされ、同じような虐待が起きないように戦っていきたい」と決意を述べた。
市や園側によると、同園では昨年2月5日、園内で跳び箱の練習中、園長の長男である職員が注意を聞かなかった園児を蹴り、鼻血を出させた。4月に発覚し、市は子ども・子育て支援法に基づき指導監査に入り、虐待防止方針や教職員の行動規範の策定を指示するなど改善を指導している。【太田穣】