静岡市歴史博物館(葵区)は、清水区の霊山寺仁王門(重要文化財)から搬出して修復中の金剛力士像(仁王像)2体について、今秋開催する仏像展の目玉として完成披露展示することを決めた。担当する宮崎泰宏学芸員は「この機会を逃せば、今後数百年にわたり仁王像が山を下りることはないだろう。仏教を生活の一部としてきた静岡の歴史の象徴として、仏像の魅力に触れてほしい」と話す。【丹野恒一】
1月13日に開館2周年を迎えた同館での仏像展開催は初めて。2025年度の当初予算案に開催費を盛り込み、市内各地の寺院などと出展の調整を進める。
展示される仁王像2体は、平安~鎌倉期制作で県指定有形文化財の阿形(あぎょう)像と吽形(うんぎょう)像(ともに高さ約2メートル20センチ)。風雨による損傷が激しかったが、23年10月に同寺から「三十三曲がり」と呼ばれる山道を静岡市山岳連盟の協力で担いで下ろし、さいたま市北区の吉備文化財修復所で保存修理作業が行われている。
これまでの作業過程で、特に重量負担がかかる両脚部の周到な補強がされていることや足先の特異な構造を確認した。クスを中心とした各部の材料の樹種なども判明した。また、吽形像の台座の合わせ目から見つかった銘文で、江戸後期の1818(文政元)年に駿府城に近い呉服町や江川町の仏師や大工が修復を行ったことが分かった。
仏像展は10月から12月にかけて開催予定。直前に修復作業を終え、再び山道を運び上げる前のタイミングをとらえた出展となる。仁王像は同館では異例の大型展示となるため、戦国時代末期の道の遺構を露出展示している1階の吹き抜けスペースを使い、2階につながる回廊に囲まれる形で設置する。
33軒の檀家(だんか)と協力して修復事業を計画した榎本宏純・霊山寺住職は「地域の人たちの夢が結実して、仁王像が元の姿に戻る。多くの人にあらゆる角度から存分に鑑賞してもらいたい」と期待している。