政府は28日、「飛鳥・藤原の宮都」の世界文化遺産登録を目指し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦すると閣議了解した。構成資産のうち大和三山(いずれも奈良県橿原市)について「考古遺跡である他の資産と性質が異なる」(文化庁)との判断から除外し19に絞った。「登録の可能性をより高める」戦略だが、喜びに沸く関係者らは複雑な表情も浮かべた。
「飛鳥・藤原の宮都」は飛鳥宮跡や藤原宮跡、高松塚古墳などの史跡や古墳で構成。国内初の中央集権体制が成立していく過程を示す物証を集めた。大和三山(香具山、畝傍山、耳成山)は藤原宮の位置を決めるのに重要な役割を果たしたとされるが、自然の山のため、資産に含める意義が分かりにくいと判断した。昨年9月に文化審議会が国内候補に決めた際にも委員から同様の指摘があった。
同日夕に記者会見した山下真知事と3市村の首長らは推薦決定に笑顔を見せる一方、橿原市の亀田忠彦市長は「慎重に検討された結果を受け止める。三山は貴重な文化遺産で、今後も構成資産と変わらず大事にしていきたい」と硬い表情も見せた。山下知事は来年度に県立万葉文化館(明日香村)に宮都を説明するスペースを設けるなどの考えも示した。
政府は月内に正式な推薦書をユネスコに提出する予定で、ユネスコ諮問機関のイコモスが今夏から秋ごろに現地調査を実施する見通し。全て順調に進めば、2026年夏にブルガリアで開かれる世界遺産委員会で登録が決まるという。【稲生陽】