東京都渋谷区の将棋会館で28日指された第83期名人戦A級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)8回戦で渡辺明九段(40)が手術したばかりの左膝の状態が思わしくなく、「対局続行できない」として午後6時に夕食休憩に入った時点で投了を申し出た。渡辺九段は手術前の2024年12月13日のA級順位戦7回戦も、脚の痛みを理由に途中投了している。渡辺九段は療養のため休場することも検討するという。
渡辺九段は夏前ごろにフットサル競技中に膝を痛め、同年12月19日から25年1月20日まで休場し、前十字靱帯(じんたい)の再建手術を受けた。23日の大阪での対局は長距離移動が難しいとして不戦敗し、この日、退院後の初対局に臨んだ。装具を左脚に着け、座っている間は装具を外し、席を立つ時は装着するを繰り返し、立ち上がった際に脚の具合を確かめるようにストレッチをすることもあった。
渡辺九段は投了の意思表明をし、「脚の感覚がなくなり気持ち悪かった」と明かした後、タクシーで帰宅。午後6時40分に休憩が明け、立会人の川上猛七段が対局相手の佐藤天彦九段(37)に、渡辺九段が投了したことを告げ、終局となった。佐藤九段は「休憩中に廊下で渡辺さんから投了を告げられ、驚きました。非常事態なので『寝ながらでも指したらどうか』と言ったが、その対処では難しい空気でした」と不安そうな表情で語った。【丸山進】