「想像してみよう。みんながアフリカ・ガーナの村の中学1年生だったら」。一人一人にこうした問いを投げかける社会科の授業が28日、愛媛県今治市立近見中学校であった。同市出身の元外交官で、ガーナで非政府組織を運営する原ゆかりさん(38)が1年生59人を対象に講演。SDGs(持続可能な開発目標)を我がこととして考える90分間となった。
国連のSDGsは2030年までに全人類が達成すべき17のゴール(目標)として「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」――などを掲げている。15年の国連サミットで採択され、日本の中学生も地理や公民の分野で学ぶ。
原さんは12年、人口約2000人のガーナ北部の村「ボナイリ」で非政府組織「マイ・ドリーム」を設立した。インフラが整備されていない村は水道の蛇口が2カ所ほどしかなく、子どもたちへの教育も不十分だった。原さんはガーナ人の共同代表らと連携して幼稚園や中学校、クリニックを設置してきた。
「初めは自分に何かができるはずだという『おごり』があった。ところが、水くみや火おこしなど村の人の世話にならないと何もできない自分がいた」と振り返った。そして「村の人と一緒に、何を問題として、どういうふうに変えたいかを考えた。私は村の取り組みのお手伝い係になった」と話した。置かれた環境を見据えて教育や産業を現地の人とともに興したことにより、村は「寄付からの自立」をほぼ達成することができたという。
原さんは、自分以外の立場に立って考えることの大切さにも触れた。汚れた古着類や古靴などの寄付を目の当たりにしたことを挙げ、「みんながボナイリで寄付を受ける側だったらどう感じるだろう?」と問いかけた。また、普段の生活で物を買うことは「どういう世の中にするかを選ぶ投票行動でもある」と指摘。「その商品を作っている会社がどういう取り組みをしているか。広い視野で世の中と向き合うことも大切」と語った。
授業後、正岡史帆さん(13)は「私たちが考えるものを押しつけるのではなく、何が必要かを話し合うことが大切だと気づいた」と話した。【松倉展人】