Infoseek 楽天

犬と猫、どちらと暮らせばより健康に? 追跡調査で見えた傾向

毎日新聞 2025年2月2日 6時30分

 ペットを飼うと心身が癒やされる。近年は健康・福祉面のメリットが知られるようになってきた。では、その中でも飼っている人が多い犬と猫で、得られる効果は違うのだろうか。

 自身も愛犬家の国立環境研究所の谷口優主任研究員(老年医学)は、伴侶動物が高齢者の健康に与える影響を調べている。「結論から言うと、犬と暮らしている人は、犬がいない人と比べて体が弱くなりにくく、認知症にもなりにくいことが研究で分かった」という。

 谷口さんらが東京都大田区在住の65歳以上の高齢者約1万1000人を2016年から4年間追跡調査した結果、犬を飼育している人は、していない人と比べて、認知症の発症リスクが40%も低かった。

 また、さらに約6200人を2年間調べて、筋力などの機能低下を示す「フレイル(虚弱)」の発症リスクを見たところ、犬を飼っている人はリスクが約20%低かった。

 では、猫と暮らす人はどうか。同じ調査で猫の飼い主についても調べたが、認知症やフレイルのリスク低下は、統計的には見られなかった。

 この違いをもたらす要因として、谷口さんは運動習慣と社会参加を挙げる。犬を飼うと散歩するため、必然的に体を動かす。さらに、散歩中の出会いなど他人との交流が生まれやすくなり、健康を阻害する社会的な孤立の防止にもつながりやすい。

 谷口さんは「犬は散歩による運動習慣で認知症やフレイルのリスクを抑制しているとみられる。猫はメンタルヘルスの面で効果があるという先行研究があるものの、飼うことによる運動効果がおそらく低いのではないか」と言う。

 調査では、犬を飼っていないが運動習慣のある人も認知症リスクが低い傾向はあったが、犬を飼い、かつ運動習慣のある人の方が、よりリスクが低かった。犬がいることで運動や社会参加の習慣が維持されやすいからとみられる。谷口さん自身も、雨の日も風の日も犬と毎日散歩し、その過程であいさつを交わす顔見知りが増えたという。

 ただ、犬を飼っていても運動習慣のない人は認知症リスクにばらつきがあり、効果があるとは言い切れなかった。そのため谷口さんは「単に犬と暮らすだけでなく、愛情を持って世話をすることで、結果的に身体的・社会的な活動が活発になり、健康長寿の恩恵が得られるのではないか」と話す。【山口智】

この記事の関連ニュース