群馬県民の心のよりどころとも言われる「上毛かるた」を全部またはほとんど「そらで言える(暗唱できる)」と答えた県民は37・7%――。県の最新調査で「県民はほとんど上毛かるたを暗唱している」との一般的なイメージとは違う実態が判明し、県は4月以降、普及に向けてテコ入れすることになった。山本一太知事は「県人のアイデンティティーの根幹。非常事態だ」と強い危機感を示している。【田所柳子】
上毛かるたは太平洋戦争の終戦後、子どもたちが郷土を誇りに思えるかるたを作ろうと、後に群馬文化協会の初代理事長を務める故浦野匡彦氏らが選定。1947年12月に誕生した、かるたは「つる舞う形の群馬県」「利根は板東一の川」「繭と生糸は日本一」など群馬愛にあふれた札が並ぶ。
ところが、県が2024年11月21日~12月2日に15歳以上の県民3000人を対象に調査した結果、暗唱できる札が「1枚もない」は23・7%、「何枚か(数枚)」は25・8%で、ほとんど覚えてない人が半数近かった。半分以上暗唱できる人のうち「すべて」は18・5%、「ほとんど」が19・2%、「半分程度」が12・8%だった。
年代別で「すべて」の割合が最も高かったのは10代の33・9%で、最も低いのは80代の9・4%。「1枚もない」が最も高かったのは20代の33・2%で、最も低いのは10代の19・4%。
また、上毛かるたで「県への愛着が深まったか」を聞いた質問で「そう思う」と回答した県民は半数超の55・6%。「そう思う」との回答は、暗唱する札が「すべて」の県民の84・4%を占めたのに対し、暗唱する札が「1枚もない」場合は17・7%にとどまった。
かるた愛についても質問した。上毛かるたを「群馬の宝と思うか」に64・6%が「そう思う」と回答。年代別で最も高かったのは70代の78・7%で、最も低かったのは30代の51・7%だった。
かるた離れは、コロナ禍で「密」を避けてカルタ大会を開催できず、開催主体だったこども会の数も減っていることが背景にある。かるたの販売数も2017年度の2万2169部から23年度の1万163部に半減した。危機感を強める県は、25年度に若手職員の提案によるかるた振興のための新規事業を検討している。