書店がなかった佐賀県多久市に1月、ブックカフェ「サランバン」がオープンした。JR中多久駅近くの「中多久マーケット」の空き店舗を活用し、司書の資格を持つ同市在住の西村ゆかりさん(46)が開店した。店名は韓国語で「たまり場」を意味する。西村さんは「みんなが来てしゃべって、コーヒーでも飲んで本を読んでくれたら」と期待を込める。
読書好きで「本屋を開くのが夢だった」という西村さんは、市立図書館や小学校で司書として12年間勤務。3年前に司書を辞めて開店準備を進めてきた。
店舗は市が炭鉱で栄えていた当時から残る中多久マーケットの肉屋だった空き店舗を活用。県の「地域商業活性化事業費補助金」と市の「新規出店者誘致支援事業補助金」を活用して1月11日に開店した。「人と人、地域と人が交差しあう体験型本屋」がコンセプト。
外装工事は業者に任せたが、店内の壁の塗装や書棚の設置など内装は昨年8月から約3カ月かけ、西村さんが家族や知人らと手作りした。約17平方メートルの店内には文芸書、アートや建築、落語などのカルチャーもの、絵本など個性的な本が200冊ほど並んでいる。
個人書店の選書や新刊案内、好きな出版社の書籍などを参考に自ら本を選び、小さな取次店や個人の出版社と直接やりとりをして店頭に並べる。「本が苦手な人にも手に取りやすいものをと心がけているが、簡単すぎると本好きな人には物足りない。バランスを取りながら選んでいます」と西村さん。
カフェや雑貨売り場も併設した店内では、カウンターでコーヒーなどを飲みながら一部の書籍を手に取って読むこともできる。西村さんは「選書も自分でやるので偏ったところもあると思うが、いろんな人と話をしていくうちに棚の本も変わっていくと思う。お客さんと一緒に作っていく本屋にしたい」と夢は膨らむ。当面は土、日曜の午前11時~午後9時のみ営業する。【斎藤毅】