京阪バス(京都市)が3月、大阪府交野市内を走る路線の多くを廃止する。市民生活への影響は必至で、山本景市長は「(公共交通の)空白をつくってはいけない」と代替策を検討。タクシーやバスの運転に必要な第2種免許を持たないドライバーによる有償運送を認める国の制度が、「地域の足」を確保するカギとなる。
京阪バスや交野市によると、市内は3月22日で、交野南部線が全線、津田サイエンスヒルズ線と津田香里線の一部が廃止となり、30を超す停留所がなくなる。交野南部線は朝の通勤・通学ラッシュ時に1時間あたり60人が利用する系統もあり、生活への影響は大きい。
廃止の理由について京阪バスは運転手不足などを挙げる。2024年に運転手の時間外労働規制が強化され、これまで通りにバス路線を維持することが困難に。運転手の平均年齢も昨夏時点で52歳と上昇傾向にあり、廃止せざるを得なくなった。
24年8月に路線の廃止方針を知らされた市は、関係機関や住民らでつくる市地域公共交通会議で代替策を協議してきた。
そこで提案されたのが道路運送法の「自家用有償旅客運送」と呼ばれる制度だ。国土交通省に登録申請することで、バスやタクシー事業者による輸送サービスが十分確保できない交通空白地帯で活用できる。路線バスの運転に必要な第2種免許が不要になり、運転手確保の間口が広がるメリットがある。交通会議で代替交通手段の具体策をまとめた後、実際の運行が始まる。
市は今後、路線バス運行の代替業務を民間会社2社に委託する方針で、会社側にドライバーも確保してもらう予定だ。60人程度が乗車できる中型車両4台(うち予備が1台)も用意してもらう。市が保有するワンボックス車(10人乗り)1台も活用する。
運行ルートはこれまでの路線バスから一部変更するものの、京阪バスが撤退する翌日の3月23日から代替車両を走らせる。現在の便数を維持することで調整しており、細部を詰めている。
運賃は、当初は現金のみの支払いを想定。市民らの利用を促すため、全区間で現行の大人(中学生以上)が250円から200円に、子ども(6歳以上12歳未満)は120円から100円に値下げされる予定だ。赤字となった場合は、市が補塡(ほてん)する。
市は「できるだけ早く市民の皆様に新たな運行について示し、安心いただけるようにしたい」と話している。【面川美栄】