東京女子医科大(東京都新宿区)を巡る資金流出事件で、警視庁捜査2課は3日、新病棟の建設工事を巡り大学に約1億7000万円の損害を与えたとして、大学の元理事長、岩本絹子容疑者(78)=東京都江戸川区=を背任容疑で再逮捕した。捜査関係者への取材で判明した。
捜査関係者によると、岩本容疑者は2020年3月~21年9月、複数回にわたり、1級建築士の男性(68)に「建築アドバイザー報酬」を支払うなどし、大学に計約1億7000万円の損害を与えた疑いがある。警視庁は、岩本容疑者が男性に過大な報酬を支払い、このうち約5000万円を自身に還流させていたとみている。
建築士の男性は16年4月に大学に非常勤で採用された。18年7月~22年2月には、給与とは別に大学施設の新築工事などに関して、「建築アドバイザー報酬」として計約3億1000万円を受け取っていた。
報酬の支払いには、施設管理を担当する経営統括部の次長を当時務めていた岩本容疑者の側近とされる女性(52)が稟議(りんぎ)に関わっていたという。警視庁はこの女性と、建築士の男性についても背任容疑で任意で捜査している。
岩本容疑者は今年1月、新校舎2棟の建設工事で18年7月~20年2月、建築士の男性に業務実態がないにもかかわらず報酬を支払うなどし、大学に計約1億1700万円の損害を与えたとして背任容疑で逮捕されていた。
この報酬のうち約3700万円が岩本容疑者に還流した疑いがあるという。還流した資金はブランド品の購入や宝塚歌劇の鑑賞費用などに充てていたとみられる。
岩本容疑者の逮捕などを受け、文部科学省の外郭団体「日本私立学校振興・共済事業団」は24年度の東京女子医大への私学助成金を全額不交付にすると決めている。【遠藤龍】