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“環状線”で奈良周遊の電車旅 「清酒発祥の地」で酒蔵巡り

毎日新聞 2025年2月4日 8時15分

 JR西日本の大和路、万葉まほろば、和歌山の奈良県内3路線がループ状につながる構造を“環状線”に見立てた県とJR西日本、奈良商工会議所による観光促進プロジェクト「ならSLOW&LOOP」が昨年末、本格的に始動した。奈良公園周辺に集中する観光客を分散させ、他の地域の滞在や宿泊につなげる企画。第1弾として、該当する沿線の駅を自由に周遊しながら酒蔵を巡る「デジタルパス」の期間限定販売を1月上旬から始めた。

 3線は、大阪環状線のように列車がいつも一周しているわけではないが、ループ状につながっているため、乗り換えれば沿線を周遊できる。プロジェクトは都心の環状線では味わえないゆったりした電車旅を楽しんでもらおうと23年、奈良商議所主導で試験的に始めていた。

 デジタルパス(2500円、連続する2日間有効)は3月30日利用開始までの期間限定で、スマートフォンアプリを通じてあらかじめ購入して使う。大和路線の王寺―奈良、万葉まほろば線の奈良―高田、和歌山線の高田―王寺の各駅が対象になる。運賃は改札を出る際に「ICOCA(イコカ)」で一旦支払うが後日、JR西日本グループ共通の「WESTERポイント」で利用分と同額が還元される。沿線の酒蔵に立ち寄ると日本酒などがもらえる特典が付く。

 対象となる酒蔵は、中谷酒造柳町醸造所(郡山駅)▽奈良豊澤酒造(帯解駅)▽稲田酒造(天理駅)▽河合酒造(畝傍駅)▽澤田酒造(JR五位堂駅)――の五つで、このうち三つを選んで利用する。「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されたのを背景に「日本清酒発祥の地」としての盛り上がりも期待される。第1弾の企画では他に、沿線の駅舎を利用したマルシェなども実施する。

 奈良豊澤酒造の豊澤孝彦社長(51)は「県や商工会議所が動いてくれた心強い企画」と期待する。同社がある帯解駅周辺は古墳群や寺社など観光スポットがある歴史深い街だが、奈良市中心部から約5キロ南に位置しており「観光客らは市内中心部を訪れた後、明日香村などに足を伸ばし、このエリアに立ち寄る人は少ない」という。

 デジタルパスによる同社の特典は純米吟醸酒(300ミリリットル)か、奈良漬けのいずれかで、利用客が徐々に増えており「帯解地域を知ってもらえるチャンス。当社独自でも観光客向けの企画を考えたい」と意気込んでいる。

 「ならSLOW&LOOP」は今後、沿線に関連する自治体や観光協会、商工会議所などで協議会を設立し、インバウンド(訪日外国人)向けの企画整備などさまざまな観点で意見交換する予定。

 酒蔵巡りのデジタルパスの購入方法や、沿線の観光情報などは特設ホームページに掲載している。【山口起儀】

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