ひきこもり状態の人やその家族に関わる官民の支援者に向けて、厚生労働省は支援のポイントなどをまとめた指針を策定した。支援の目指す姿を、就労や社会参加そのものではなく、自らの意思で生き方や社会との関わり方を決めることができるようになる「自律」と明記した。国が支援者向けの指針を策定したのは初めてで、1月31日付で全国の自治体に通知した。
指針では、ひきこもり支援の対象者を「社会的に孤立し、孤独を感じている」「さまざまな生きづらさを抱えている」状態の人やその家族と定義。具体的には生活上の困難を抱え、家族を含む他者との交流が限定的で支援を必要としている人たちとし、ひきこもり状態の期間は問わない。
これまで支援の目標とされることが多かった就労や社会参加については「プロセスであり、それのみが支援のゴールではない」と明示。80代の親が50代の子どもを養う「8050問題」など30の事例を紹介し、それぞれ支援のポイントを時系列でまとめている。
自治体の支援現場では、2010年に精神科医を中心とした有識者グループがまとめたガイドラインが広く使われてきた。ひきこもり状態にある期間を原則6カ月以上と定義し、その背景には病気や障害があるとして医療的支援を主眼としていた。しかし、全国に推計146万人とされるひきこもり状態の人は多様で、従来の考え方では支援が深まらない課題があり、厚労省が実態に即した指針作りに乗り出していた。
厚労省地域福祉課の担当者は「目指す『自律』の形は一人一人違う。ハンドブックを参考に、本人や家族と対話を大切にして、目指す姿を確認し合いながら支援を進めてほしい」としている。【黒田阿紗子】