「お客様の激減 ピンチです」。そんな刺激的なフレーズやイラストがラッピングされた北九州市営バスの車両が、1月から市内を走っている。利用客の減少や運転手不足など市営バスを取り巻く環境が厳しさを増す中、バス利用を促進し、運転手不足の解消につなげようと市交通局が企画した。
北九州市営バスは主に八幡西、若松、小倉北各区の市街地を結ぶ路線で、約640便を運行している。移動手段が少ない高齢者を中心に利用されてきたが、年間利用客は1966年の約3116万人をピークに年々減少。さらに新型コロナウイルス禍が拍車をかけ、直近の10年では2013年の約700万人から23年は約390万人に激減した。
市営バスの23年度の営業収支は約1億5000万円の赤字で、厳しい経営状況が続く。
慢性的な運転手不足も深刻な問題だ。観光・貸し切りバスを含めた事業の継続には161人の運転手が必要(25年1月1日時点)だが、14人が不足。加えて運転手の約半数が60歳以上と高齢化も課題となっている。
このため市交通局は1月から「乗っていない人は『月に2回』」、「バスの運転手になろう!」などと書かれたラッピングバスの運行を開始。さらに運転手の初任給を経験に応じて最大4万円増額し、賞与も年間2・4カ月分から4・6カ月分にアップするほか、大型2種免許を取得する際には最大50万円を補助する制度も設けた。また、SNS(ネット交流サービス)で市営バスのPR動画の配信も始めた。
市は現在、市営バス事業の構造改革などを議論する有識者を交えた検討会で、効率的なバス路線の運行方法を検討している。武内和久市長は記者会見で「改革と利用促進の両輪で検討を進める。地域の足を守り、経営を持続可能とするため、できる限りの手を打っていく」と話した。【山下智恵】