埼玉県八潮市の県道交差点で道路が陥没しトラックが転落した事故が発生してから4日で1週間を迎えた。
事故後、国土交通省が昨年全国で運用を開始したLINE(ライン)による道路緊急ダイヤルには通報が殺到。X(ツイッター)では、事故前に撮影された現場付近の道路のひび割れが陥没の「前兆」ではないかと投稿されるなど、人々の陥没に対する警戒心の高まりが見て取れた。
国交省の緊急ダイヤルは、道路の穴や路肩の崩壊、路上の動物の死骸や落下物などについて受け付けている。
事故の直前の1カ月間の通報件数は計120件だったのに対し、事故後は1日あたり200件を超え、270件に上る日もあったという。
多い日には全体の75%を「路面の穴ぼこ・段差」に関する通報が占め、国交省の担当者は「数字をみると、相当な不安や関心の高さがあるのは確かです」と事故後の通報の多さに驚きを隠さなかった。
またXには、事故前に撮影された現場近くのアスファルト舗装道路の画像が投稿され、画像に写る道路のひび割れが陥没事故の「前兆」ではないかなどと書き込まれ、拡散された。
ただ、アスファルト舗装に詳しい、日本大学工学部の前島拓専任講師(土木工学)は取材に対し、SNS(ネット交流サービス)に投稿されたひび割れは、生活道路でみられる劣化によるものであると説明し、「今回の陥没事故とは直結しません」と冷静になるよう呼び掛けた。
アスファルトの舗装道路は人や車が直接触れる表層と、砂利を敷き詰めた路盤からなり、表層は、路盤とその下の路床という土でできた層に支えられているという。
今回の事故は、路床よりもっと奥深い層が下水道管の劣化によって崩れ、舗装を支えている部分がアスファルトの重さに耐えられずに一気に崩れ落ちたとみられている。
前島さんによると、たとえ道路にひび割れをみつけたとしても、下水管の破裂によって水が急激に湧き上がってくるような特異な現象が起きなければ、抜け落ちることはないという。
ただ、表層の劣化でひび割れや穴でパンクしたり、ハンドルを取られたりすれば交通事故につながりかねない。前島さんは、陥没を過度に心配しする必要はないとしつつ、「交通の安全を脅かすような穴などの劣化については国や自治体へ通報することはいいことです」と語った。【太田敦子】